研究課題
象牙芽細胞に高pH(アルカリ性)刺激を行うと、細胞外Ca2+濃度依存的な細胞内Ca2+シグナルの増幅が見られる。その高pH刺激はTRPA1チャネルにより受容されている。しかしながら、高pH環境の石灰化に対する影響とTRPA1チャネルの石灰化に対する寄与は不明である。加えて、象牙芽細胞におけるTRPA1チャネル以外のアルカリ感受性タンパク質も不明である。そこで、本研究では象牙芽細胞においてアルカリ感受性タンパク質とアルカリ刺激の石灰化に対する影響を検討した。新生仔ラット切歯から得た象牙芽細胞マーカー陽性細胞にfura-2を用いて細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)測定を行った。石灰化の実験ではヒト培養象牙芽細胞(HOB細胞)を用いて長期培養を行い、14、28日後にalizarin red染色、von Kossa染色を行った。アルカリ刺激での活性化が報告されているstore-operated Ca2+ channelsにより生じるstore-operated Ca2+ entry(SOCE)の発現を検討した。細胞外Ca2+非存在下で、Ca2+ストア膜上のCa2+-ATPase阻害薬を投与すると一過性に[Ca2+]iが増加した。[Ca2+]iが静止レベル付近まで戻った後、2.5 mM Ca2+を投与するとSOCEが誘発された。そのSOCEの振幅はアルカリ刺激で大きくなったことから象牙芽細胞においてアルカリ感受性を示すSOCEが生じることが示された。アルカリ刺激の石灰化への影響を検討するためalizarin red染色、von Kossa染色を行った。アルカリ刺激(7、14時間)は石灰化を促進すること、TRPA1 channelは生理的条件下、アルカリ条件下ともに石灰化を促進することが示された。
3: やや遅れている
これまでの研究では細胞内カルシウム濃度測定とパッチクランプ法を用いてアルカリ刺激に対する象牙芽細胞の応答を明らかにしたが、石灰化についての検討はしていなかった。そのため、グルタミン酸・ATPがアルカリ刺激による石灰化の促進への効果を検討する前に、実際にアルカリ刺激によって石灰化が促進されるかを検討した。加えて、アルカリ条件での長期培養法の確立に時間を要したため。
次の4点について検討する。1、ATP、グルタミン酸を含めた石灰化を促進する可能性のある物質について、培地にそれらを添加し生理的条件でのHOB細胞の長期培養を行い、alizarin red染色、von Kossa染色によって石灰化への効果を検討する。2、1で検討した物質を添加した培地中でアルカリ条件での培養を行い、それらの物質のアルカリ刺激で促進される石灰化に対する効果を検討する。3、1) 象牙芽細胞に発現する代謝調節型核酸受容体(P2Y受容体)、イオンチャネル型ATP受容体、代謝調節型・イオンチャネル型グルタミン酸受容体サブタイプ発現の詳細2) 高pH刺激誘発性細胞内Ca2+シグナルのATPとグルタミン酸による薬理学的修飾作用について細胞内カルシウム濃度測定により検討する。4、Na+-Ca2+ ATPase, 細胞膜上Ca2+-ATPaseの象牙質形成への寄与をin vitro、in vivo実験により検討する。
購入したい試薬はあったが、1365円では購入できないため。
試薬の購入にあてたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Pflugers Archiv European Journal of Physiology
巻: 467 ページ: 843~863
10.1007/s00424-014-1551-x
Neuroscience Research
巻: 98 ページ: 17~27
10.1016/j.neures.2015.04.008
The Bulletin of Tokyo Dental College
巻: 56 ページ: 131~134
10.2209/tdcpublication.56.131
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 9 ページ: 229
10.3389/fncel.2015.00229
Frontiers in Physiology
巻: 6 ページ: 326
10.3389/fphys.2015.00326
巻: 56 ページ: 259~262
10.2209/tdcpublication.56.259.