研究課題/領域番号 |
15K11129
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
木村 麻記 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (90582346)
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研究分担者 |
渋川 義幸 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (30276969)
田崎 雅和 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (40155065)
佐藤 正樹 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (80598855)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 象牙芽細胞 / アルカリ刺激 / SOCE / 石灰化 |
研究実績の概要 |
象牙芽細胞に高pH(アルカリ性)刺激を行うと、細胞外Ca2+濃度依存的な細胞内Ca2+シグナルの増幅が見られる。その高pH刺激はTRPA1チャネルにより受容されている。しかし、高pH環境の石灰化に対する影響とTRPA1チャネルの石灰化に対する寄与は不明である。加えて、象牙芽細胞におけるTRPA1チャネル以外のアルカリ感受性タンパク質も不明である。そこで、本研究では象牙唆細胞においてアルカリ感受性タンパク質とアルカリ刺激の石灰化に対する影響を検討した。 新生仔ラット切歯から得た象牙芽細胞マーカー陽性細胞にfura-2を用いて細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)を計測した。石灰化の実験ではヒト培養象牙芽細胞(HOB細胞)を用いて長期培養を行い、alizarin red染色、von Kossa染色を行った。 細胞外Ca2+非存在下で、Ca2+ストア膜上のCa2+-ATPase阻害薬、P2Y受容体アゴニストおよびムスカリン受容体アゴニストを投与するとそれぞれ一過性に[Ca2+]iが増加した。[Ca2+]iが静止レベル付近まで戻った後、2.5 mM Ca2+を投与するとCa2+ release-activated Ca2+(CRAC)チャネル阻害薬感受性のCa2+流入(SOCE)が生じた。一方、代謝型グルタミン酸受容体アゴニストはSOCE を活性化しなかった。SOCEの振幅はアルカリ刺激で増加した。これらの結果から象牙芽細胞におけるSOCEはCRACチャネル活性化により生じ、アルカリ感受性であることが示された。 アルカリ刺激の石灰化への影響を検討した。アルカリ刺激は石灰化を促進すること、TRPA1 チャネルは生理的条件下、アルカリ条件下ともに石灰化を促進することが示された。 象牙芽細胞間の連絡因子であるATP、ADPおよびグルタミン酸の石灰化への影響を検討した結果、石灰化を促進しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究成果からATP、ADPおよびグルタミン酸は石灰化を促進する可能性があるとして研究計画を立ててきた。しかしながら、それらは石灰化を促進しなかったことで計画を変更し、アルカリ刺激で活性化されるSOCEの薬理学的特性の解明と石灰化への寄与を検討することにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
次の4点において検討する。 1、培地にCa2+ストア膜上のCa2+-ATPase阻害薬を添加し生理的条件でHOB細胞の長期培養を行い、alizarin red染色、von Kossa染色によりSOCEの石灰化への効果を検討する。 2、CRACチャネルの阻害薬を添加した培地を用いて1と同様の実験を行い、CRACチャネルの石灰化への効果を検討する。 3、SOCEを活性化に関与するCRACチャネルのサブユニットとCa2+ストアのカルシウム濃度を感知するタンパク質の同定をsiRNAを用いた細胞内カルシウム濃度測定により検討する。 4、SOCEが生じたときのNa+-Ca2+ ATPase、細胞膜上Ca2+-ATPaseのCa2+排出への寄与を細胞内カルシウム濃度測定により検討する。加えてそれらタンパク質の象牙質形成への寄与をin vitro、in vivo実験により検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ATP、ADPおよびグルタミン酸の石灰化に対する影響を検討後、RT-PCRやELISA法を行う予定であった。しかしながら、それらの物質は石灰化を促進しなかったことからRT-PCRやELISA法を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度にsiRNAを用いた実験を行うことに変更したので、siRNAを購入したい。
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