研究課題/領域番号 |
15K11132
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
平山 聡司 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (70189869)
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研究分担者 |
岩井 啓寿 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (10453888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リン酸カルシウムセメント / 象牙質コーティング / 再石灰化溶液 / 象牙質知覚過敏症 |
研究実績の概要 |
近年、齲蝕・歯周病に次ぐ第三の歯科疾患と言われるTooth wear(歯の損耗)が注目されているが、その中でもエナメル質の酸蝕や亀裂の発生に伴って象牙質知覚過敏症が高頻度に生じる。そこで本研究は、知覚過敏症を伴う歯への対処として露出した象牙細管の封鎖を目的として、リン酸カルシウムを各種の溶液で練和したものを象牙質表面にコーティングを行い、象牙細管を封鎖することにある。 溶液は、蒸留水(コントロール)、0.5Nリン酸水素ナトリウム溶液、2%フッ化ナトリウム溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液および酸性リン酸カルシウム溶液の5種類とした。特にこの溶液な中でも酸性リン酸カルシウム溶液と近年開発されたα -Tricalcium Phosphate(α - TCP)とTetracalcium Phosphate (TTCP) が同じ粒子中に均一に分散して単峰性粒度分布を示す均一二相性を示すBiphasic Calcium Phosphate-based Cement(BCP-cement)の硬化特性について検討を行った。 酸性リン酸カルシウム溶液を蒸留水で3.0倍(1:3.0)、3.5倍(1:3.5)および4.0倍(1:4.0)に希釈した溶液を用いてBCP-cementと練和し、硬化時間をGilmore Needle法にて温度37℃、相対湿度50%の条件下で注入可能時間、充填可能時間および硬化時間を測定した。 BCP-cement練和物は、溶液中でも極めて良好な形状保持性と流出抵抗性を示した。BCP-cementの硬化時間は、1:3.0で最も早く6.1±0.1分、1:4.0は8.1±0.1分で最も硬化時間が延長した。硬化時間の測定から臨床応用可能な即時硬化性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度における本研究は,実験試料であるTTCP/DCPA リン酸カルシウムを溶液として蒸留水(コントロール),リン酸水素ナトリウム水溶液,フッ化ナトリウム,ケイ酸ナトリウム水溶液の計4種類を用いて,Calcium Phosphate Remineralizing Slarry(以下CPRS)を作製し,硬化時間の測定,pH 変化,硬化物のSEM 観察および元素組成分析を行い,材料学的特性について検討する予定であった。しかし,当初実験試料に供したTTCP/DCPAリン酸カルシウムと比較して,TTCPとα-TCPが同じ粒子中に均一に分散し,作製が容易で材料的に均一で安定性を示す均一二相性リン酸カルシウムセメント(Biphasic Calcium Phosphate-based Cement:BCP-cement)を比較検討材料として使用する実験計画を追加することになった。このため、BCP-cementの有用性を明らかにするために硬化時間の測定とダイヤメトラル引張り強さの測定を先行して行ったことで実験計画の進捗に遅れを来たした。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に遅れがあるが,申請内容に関わる研究計画を推進していく。 具体的には,1)平成27年度実施予定であったTTCP/DCPA 粉末と4 種類の練和液(蒸留水,リン酸水素ナトリウム水溶液,フッ化ナトリウム,ケイ酸ナトリウム水溶液)と練和してCPRSを作製する。溶液の違いによる材料学的特性を明らかにするために①硬化時間の測定,②pH 変化,③硬化物のSEM 観察および④析出物の元素組成分析を実施する。 2)TTCP/DCPA と4 種類溶液で練和したCPRSを牛抜去歯の露出象牙質面に作用時間を変えて処理し,ハンクス溶液1~90 日間保管する。SEM 観察試料を作製し象牙質表面および縦切片の形態的変化を観察行う。SEM観察試料と同様にして作製した試料の象牙質表面をX線光電子分光装置および微小領域X線回折装置を用いて分析し,CPRS処理によって生じた象牙質表面の変化について検討を行う。 3)上記TTCP/DCPA粉末と比べてBCP-cementを酸性リン酸カルシウム溶液で練和して作製したCPRSで牛象牙質面を処理して比較検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度(平成27年度)の研究経費において、TTCP/DCPA粉末を作製するために必要な各種リン酸カルシウム粉末と焼成後の粉砕に使用するメノウボールを消耗品として購入品目に計上していたが、BCP-cementの実験系を先行させたことによりほとんど購入しなかった。また、BCP-cementについては、研究協力者から提供を受けることができた。以上の2点の理由により次年度使用額に差が認められた。
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次年度使用額の使用計画 |
新年度(平成28年度)以降は、リン酸カルシウムセメントの作製や実験試料の購入が必要となる予定なので、今後、現在使用中の実験試料が無くなる前に消耗品として購入する予定である。
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