齲蝕識別装置の試作にあたり、可視光が透過し、口腔内へ挿入可能なこと、および取り外して洗浄・消毒を行うことが可能であることから、歯科治療用Er:YAGレーザーの照射用チップ(P400T、モリタ製作所)を硬さ測定用のプローブとして利用した。He-Neレーザーから出力された光をプローブに入射し、先端から出射される光の強さをパワーメータ(PM20、ソーラボ)で測定した。プローブ先端に黒色の塗料を塗布した場合の光出力を測定した後、プローブ先端を模擬試料に接触させてプローブ先端の塗料を一部剥離させた。 その後、プローブから出力される光の強さを測定した結果、試料との接触前と比べて光出力が有意に向上し、光出力を測定することで試料の硬さを測定し、齲蝕を識別できることが示唆された。この実験で用いた歯科治療用Er:YAGレーザーの照射チップは既に歯科治療で使用されていることから、齲蝕識別装置の早期実用化に適しているが、プローブからの反射光強度が低く、検出が困難であることがわかった。このため、上記の実験ではプローブからの反射光ではなく透過光を測定しているが、齲蝕識別装置を小型化するためには反射光を測定することが好ましい。そこで、プローブからの反射光強度を高めるため、新たなプローブを独自に設計し、歯科治療の現場でも利用可能な改良型の試作機を製作した。この試作機でウシ歯の健全象牙質と脱灰象牙質の識別を試みた結果、統計的に有意な差をもって健全象牙質と脱灰象牙質を識別することに成功した。独自に設計した改良型試作機について特許出願を予定している。
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