研究課題
最終年度は,前年度までの結果を基に,咬合面の真上から出力20mW,波長800nmのレーザー光を照射して人工歯の内部で散乱した光を入射光軸に対して直交する水平面に設置した赤外線カメラで撮像した透視画像データについて解析をすすめた.生ハムを巻いた支台歯の透視画像の画素輝度値を比較して,透視したマージン部付近の形状を描出した画像を生成した.同時に,既知の円柱形状のロッドで同様の撮像を行い,その画像からロッドのエッジを抽出して回転軸と直径を求め,人工歯の画像からマージンの座標値を算出する際の基準とした.このようにして回転ステージ上で角度を1度ずつ回転させて撮影した360枚の画像からマージン部分のポイントを抽出し,マージンラインの3次元形状を立体再構築すると共に,別途,既存設備である石膏模型用スキャナーで取得した支台歯形状との重ね合わせ比較を行った.透視画像から抽出した形状データは,マージン部をある程度表現することができたが,シルエットである透視画像では特に奥行方向に対してマージン点の識別に誤差が大きく,頬側および舌側でうまく点を拾えていないことがわかった.再構築したマージンラインは,近遠心側と舌側の3面で実際のマージンよりも内側に入っており,頬側では高さ方向にも大きくずれたものとなった.これは,実際のマージン上の点とシルエットである透視画像に反映されている辺縁に見える点とのずれが大きく影響しているものと考えられた.このため,正確な形状を捉えるには,より多くの情報を加えて精度を上げていく必要がある他,光の強度や照射方向,カメラの撮像方向のほか,切削用バーの形状を画像解析時に考慮してマージン点の探索領域を絞り込むなど,幾つかの異なった手法を併用しながら解析を進めていく必要があるものと考えられた.
すべて 2017
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Hokkaido Journal of Dental Science
巻: 38(Special issue) ページ: 104-110