研究課題/領域番号 |
15K11146
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大井 孝 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (10396450)
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研究分担者 |
坪井 明人 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (00241646)
三好 慶忠 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (10508948)
服部 佳功 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40238035)
村上 任尚 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (70451606)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高齢者 / 口腔機能 / 抑うつ / コホート研究 |
研究実績の概要 |
岩手県花巻市大迫町在住の55歳以上の住民に対し,ベースライン調査として口腔関連QOL (Oral impacts on daily performances: OIDP)と抑うつ傾向 (Zung Self-rating depression scale: SDS)を調査し,さらにその4年後に同様の追跡調査を実施した.口腔関連QOLは10項目の質問からなるOIDPにおいて,1項目でも日常生活に支障がある場合をQOLの低下ありとした.抑うつはSDSが40点以上(80点満点)を抑うつありとした.ベースライン調査時に抑うつが無く,4年後の追跡調査を受診した296人を解析対象とした. 追跡調査の結果,対象者のうち12人に抑うつの発生を認めた.抑うつ発生を認めた者は認めなかった者に比べ有意にベースライン調査時のSDSが高値で,口腔関連QOL低下の割合が高かった.多重ロジスティック回帰分析の結果,ベースライン調査時の口腔関連QOLの低下と4年後の抑うつ発生は,年齢,性,既往歴,BMI,喫煙,飲酒,認知機能,学歴,ベースライン調査時のSDS得点と独立して有意な関連を示した.一方,口腔保健の客観的指標である現在歯数と歯科受診行動は4年後の抑うつ発生との関連は認められなかった. 口腔関連QOLの低下が4年後の抑うつ発生とも有意な関連を認めたことから,口腔関連QOLの低下が抑うつの危険因子あるいは予測因子である可能性が示された.また,これまで既に,主観的健康感の不良が抑うつの発生に関わることがメタ解析により示されているが,口腔の不健康感もまた,充実した食生活を損ねるだけでなくコミュニケーションや審美の問題を介して高齢者の精神的不活発に影響する可能性が示唆された. 一方,今年度は新たに岩手県花巻市大迫の55歳以上の地域住民120人に対し,心身機能の検査と歯科検診を実施し,得られたデータを集計した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔関連QOLと抑うつとの関連が縦断的に示された.また検診実施によりコホートの拡大が確実に図られている.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はなく引き続き新たな対象者のリクルートと調査を実施しコホートの拡大を図るとともに、これまでのデータベースをもとに解析を進める。 解析内容は①地域高齢者における認知機能低下の発生の実態の把握、②認知機能低下の発生と口腔状態・機能との関連、③口腔状態・機能の変化と認知機能との関連である。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表のための英文校正が次年度にずれこんだため.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に使用予定だった英文校正費に使用する.
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