研究課題/領域番号 |
15K11149
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥山 弥生 東北大学, 大学病院, 助教 (30223697)
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研究分担者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
新部 邦透 東北大学, 大学病院, 助教 (50468500)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 顎堤吸収 / 義歯床材料 / 破骨細胞 / 力学的刺激 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
義歯床材料は、その生体安全性が担保されているのは当然であるが、細胞生物学的には口腔粘膜細胞は材料に接することで各材料に特有の増殖因子を産生するのも事実である。また、骨免疫学の観点から考えると、これら産生物に破骨細胞を刺激する因子が含まれていれば、粘膜直下に存在する歯槽骨を吸収に導く可能性がある。本研究の目的は、義歯床材料の違いによって口腔粘膜細胞が産生する因子の違いを明らかにし、顎堤吸収に関わる因子が、義歯床材料に特異的に誘発される可能性を検討することである。 培養皿上でヒト歯肉線維芽細胞(研究室保有)を培養し、培養上清を回収し、この培養上清の存在下で破骨細胞前駆細胞から破骨細胞分化への誘導を行ったが、誘導が不十分であり、各試料に対するコントロールとして用いることが困難であることが示唆された。 そこで実験計画の見直しを行った。チタン上の機械的刺激に対する骨芽細胞反応はチタン表面形態により異なるという報告(Sato N, et al. J Dent Res, 2009)に基づき、床用材料とメカニカルストレス、骨免疫との関わりという観点から、表面処理法が確立している純チタンを用いて、チタン表面形態が骨免疫に与える影響を調べる計画に直した。まず、破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞、次にマウスの単球・マクロファージ様細胞株であるJ774A.1細胞を各種チタンプレート試料上で培養し、培養細胞からtotal RNAを回収し、それぞれの遺伝子発現を検討する。M1マクロファージのマーカー遺伝子(iNOS等)およびM2マクロファージのマーカー遺伝子(CD206)の発現を検討することにより、各チタンプレート試料のうち、どの試料がM1マクロファージへの活性が生じるかを検討する。以上、顎堤吸収に関わる因子が、義歯床材料に特異的に誘発される可能性について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度に義歯床用材料の中の特にジルコニア、純チタンのディスク製作に予定よりも時間がかかったため、各種ディスクの培養試験の開始が遅れた。2年目に培養皿上でヒト歯肉線維芽細胞を培養し、24~72時間後に培養上清を回収し、この培養上清の存在下で破骨細胞前駆細胞から破骨細胞分化への誘導を検討したが、この条件では分化を十分に誘導することができず、各試料に対するコントロールとして用いることが困難であることが示唆された。そこで、計画通りに進まない場合の対策として、実験系の見直しを行ったために遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
チタン上の機械的刺激に対する骨芽細胞反応はチタン表面形態により異なるという過去の報告(Sato N, et al. J Dent Res, 2009)や培養基面の表面形態の特徴に沿った細胞形態をとることにより、マクロファージ分化の方向性が変化するという報告(McWhorter FY, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013)に基づき、床用材料とメカニカルストレス、骨免疫との関わりという観点から、表面処理法が確立している純チタンを用いて、チタン表面形態が骨免疫に与える影響を調べる計画に立て直した。 様々な表面性状をもつチタンプレートの試料として機械研摩(MS)、酸処理(AS)、ナノ表面処理二種類(NS1, NS2)を準備し、各試料上で、破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞を培養し、その遺伝子発現を検討する予定である。チタンプレートの表面性状の違いにより、RAW264.7細胞がマクロファージとしての活性型に変化を生じることが期待される。さらに、マウスの単球・マクロファージ様細胞株であるJ774A.1細胞をJCRB細胞バンクより購入することにより、マクロファージにおけるチタンプレートの表面性状による影響を検討する。各チタンプレート試料(MS, AS, NS1, NS2)を作製し、試料上でマクロファージを培養する。培養1日目、3日目、5日目で培養細胞からtotal RNAを回収し、遺伝子発現を検討する。M1マクロファージのマーカー遺伝子(iNOS等)およびM2マクロファージのマーカー遺伝子(CD206)の発現を検討することにより、どの試料でM1マクロファージへの活性が生じるかを検討する。 さらに培養上清が破骨細胞分化および骨芽細胞分化へ影響を及ぼすか、機械的刺激条件下での反応性の違いを検討した上で、そのメカニズムを同定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系の見直しを図ったため、細胞培養に関する消耗品の購入が当初の予定額よりも少なく済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞やマウスの単球・マクロファージ様細胞株であるJ774A.1細胞の培養に必要な消耗品ならびに生化学的試験の試薬を購入予定である。また、培養基面となる主にチタン材料の購入費用に充てる。
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