研究課題/領域番号 |
15K11158
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70304326)
|
研究分担者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20112063)
吉原 久美子 岡山大学, 大学病院, 助教 (90631581)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | CAD/CAM / ハイブリッドレジンブロック / 電子顕微鏡 / サンドブラスト / シランカップリング |
研究実績の概要 |
CAD/CAM用ハイブリッドレジンブロックの構造は,走査電子顕微鏡(SEM),透過電子顕微鏡(TEM)および走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察した。一部は,文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(NIMS微細加工プラットフォーム)の支援を受けて,集束イオンビーム加工装置-走査電子顕微鏡複合装置(FIB-SEM)によるシリアルセクショニング法により3次元再構築した。TEMおよびSTEM観察により,SEMで観察できない微細構造が明らかになった。FIB-SEMによる3次元再構築は,分解能とコントラストが低いものの,フィラーの3次元分布が明らかになった。 ハイブリッドレジンブロックは,レジンセメントによる接着の前処理として,サンドブラスト処理される。サンドブラストによるダメージを表面および断面観察した。サンドブラストのメディアには50μmのアルミナサンドを用い,0.2MPaで実施した。微細なクラックが生じるほか,一部の製品にはフィラーの脱落が見られた。これは,ハイブリッドレジンブロックのマトリクスレジンとフィラーとのカップリングが不十分なためと示唆された。サンドブラスト処理でフィラーの脱落が見られた製品は,レジンセメントによる合着時にシランカップリング処理しても,接着強度の増加が見られなかった。これは,残ったフィラーがカプリングされても,ハイブリッドレジンブロックからフィラーが脱落するためと示唆された。サンドブラスト処理によりできた表面に近いクラックには,合着時にレジンセメントが入り込み,クラック発生の影響が少ないと示唆された。一方,内部にできたクラックにはレジンセメントが入り込めず,影響があると示唆された。 シランカップリング剤,多官能メタクリロキシモノマーの細胞毒性は,モノマーでは毒性があるものの,完全に重合すれば毒性は問題にならないと示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CAD/CAM用ハイブリッドレジンブロックは,平成27年度に新製品が販売されたが,市販品はすべて観察した。当初予定していた数量以上に観察できた。さらに,サンドブラスト処理した表面とレジンセメントで合着した接着界面の断面も,TEM,STEMで観察できた。これは,当初計画を上回る成果である。 ハイブリッドレジンブロックのサンドブラスト処理によるダメージ,接着試験による評価と考察,ナノレベルの構造観察は,日本歯科保存学会,日本接着歯学会で報告した。 ハイブリッドレジンブロックのカップリング処理にも使えるとされるシランカップリング剤を含有した歯質接着剤を評価した。含有されるシランカップリング剤は縮合してオリゴマーになっており,カップリング剤としての効果が無くなっていることを見出した。結果は,日本歯科補綴学会,Academy of Dental Materials 2015 Annual Meetingで報告した。 モノマーの細胞毒性評価は,当初計画通りに進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
CAD/CAM用ハイブリッドレジンブロック接着面の最適な粗造化処理条件,シランカップリング処理前の最適な親水化処理条件,シランカップリング処理を行うプライマーの検討を行う。粗造化処理条件は,平成27年度の成果をもとに,サンドブラストのメディアに小径のアルミナサンドを用いる。シランカップリング処理前の最適な親水化処理条件は,ドライプロセスによる親水化の検討を行う。シランカップリング処理を行うプライマーは,一般的なγ-MPTSのほか,長炭化水素鎖のシランカップリング剤を用いるほか,多官能メタクリロキシモノマーや溶媒を混ぜることも検討する。
|