研究課題/領域番号 |
15K11164
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田上 直美 長崎大学, 病院(歯学系), 准教授 (70231660)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジルコニア補綴装置 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度の研究結果をより臨床に近づけるための手法として、窯業分野での上絵付けによる色調再現とその耐久性について検討した。 既存の単色(赤系)転写紙を1,2,4,8枚の厚みで市販工業用緻密質CAD/CAMジルコニアフレームに直接上絵付けし、焼成して色調を測定した。色調の測定には分光光度計(クリスタルアイ)を使用した。その後、1試料につき200 gの荷重をかけ、毎分140 ストロークの計20,000 ストローク(10,000 ストローク毎にブラシヘッド交換)で歯ブラシ摩耗試験を実施し、再度色調を測定した。コントロールには歯科用の着色用陶材(ステイン)の赤色系を用いた。表色法にはCIE1976L*a*b*表色系を用いた。 色調に関するデータとしては摩耗試験前後の色調の差(色差)である⊿E*abを計算にて求めた。⊿E*abの値は等分散性を示したため、一元配置分散分析を用い多重比較検定を行った(α=0.05)。 8枚印刷では焼成後に気泡の存在が認められたが、1,2、4枚印刷では気泡は生じなかった。また、転写紙の厚みは増すほど鮮明な色が再現できた。⊿E*abの平均値は、1枚で3.4、2枚で1.5、4枚で1.7、8枚で1.7、ステインで2.3であり、1枚とステインで2以上の値を示した。1枚は他の全ての条件と比較して有意に高い色差を示した。摩耗試験によって焼き付けた上絵付けもしくは着色用陶材料は、歯ブラシによって摩耗し退色することが判明した。色調の耐久性には一定の厚み以上の転写紙の焼き付けが必要であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の予定では、本研究の初年度に表面粗さに関する研究を実施し、2年目までに色調の回復に関する事項の確認を行うことを目標としていた。本年度は色調の回復に関する事項の研究が終了したため、研究は順調に進行していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度の計画通り、最終年度として今までのデータの収集、統計解析等を行い、結果を学会発表、論文発表へとつなげていく。一方で、追加すべきデータや追加すべき実験が必要である場合は速やかに取り組んでいく。今年度までの進捗は順調であり、今後も同様の進度で取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度研究は当初予算の通りに遂行できたが、平成27年度に残余金が発生しており、その多くを今年度使用しなかったために再度繰り越しとなった。平成27年度に残余金が生じた理由は、研究協力者からの材料提供があったためである。また、予定していた初年度の研究発表ができなかったため、出張費の一部も繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成29年度は、学会発表や論文発表を初年度の予定以上に行うこととしており、この予定以外の発表について平成27年度分繰越金を使用予定である。平成29年度は当初の予定通り研究を遂行する予定であり、その研究に関しては交付決定額の中から平成29年度に分配される予算を使用予定である。
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