加齢に伴い骨再生能の低下が起こることが知られている。組織の再生には再生部位への血管の誘導が最も重要であるが、加齢により血管新生能も低下することが報告されている。これまで我々は、老化による骨再生能低下における血管新生の役割ついて探索するために、長期培養を行うことによって強制的に細胞老化を誘導した間葉系幹細胞(MSC)を用いることによって、老化に伴う骨再生能の低下と血管新生能との関連性について評価を行ってきた。 H29年度は前年度に引き続き、老化マウス(20ヶ月齢)と若年マウス(10週齢)を用いて、それぞれのマウスから骨髄由来MSC、さらに皮下脂肪より脂肪由来幹細胞(ADSC)を採取し、培養を行った。老化マウスおよび若年マウスのいずれのマウスからもMSC、ADSCの採取・培養に成功した。細胞表面マーカーに関しては、MSCおよびADSCいずれの細胞においても老化マウス、若年マウス間で有意な差は認められなかった。細胞増殖能において、MSCおよびADSCの両細胞において老化マウス由来細胞は若年マウス細胞に比べ、顕著な増殖能の低下が確認された。骨分化能に関しても老化マウス由来MSC、ADSCはアルカリフォスファターゼ活性および石灰化能が顕著に低下していることが確認された。また、angiogenic protein arrayを用いて血管新生因子発現について評価を行ったところ、老化マウス由来MSCにおいて複数の血管新生因子発現が低下していることが明らかとなった。現在、老化MSCおよび若年MSCをβ-TCPと混和し、SCIDマウス頭頂骨部へ移植を行い、老化細胞による血管新生因子発現低下と生体内での骨増生効果との関連性の評価を継続中である。
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