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2016 年度 実施状況報告書

口腔機能の障害がヒト高次脳機能の学習記憶機能に及ぼす影響

研究課題

研究課題/領域番号 15K11172
研究機関岩手医科大学

研究代表者

小林 琢也  岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (50382635)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード歯の喪失 / 認知機能 / 脳 / fMRI
研究実績の概要

本研究では「口腔機能障害の影響がヒト脳の認知機能に直接影響を及ぼす」との仮説のもと,口腔機能障害の一番の問題である歯の喪失による咀嚼障害に注目し,歯を喪失した高齢無歯顎者に対し,7T-fMRIを用いて高次脳機能における記憶学習に関与する脳部位の形態学的検討と脳機能評価を行うところまでを最終目標とする.
H28年度は口腔機能障害の影響を検討するために,義歯の不良により口腔機能が低下した状態での認知機能と義歯を新製して口腔機能を回復させた状態での認知機能に関して検討した.被験者は,65歳以上の上下顎無歯顎患者10名とした.口腔機能評価は,上下顎全部床義歯装着時における,咬筋筋活動量,咬合力の測定ならびに咀嚼能力評価とした.脳活動の評価にはf-MRI(functional magnetic resonance imaging)を用い脳血流量を評価した.認知機能の評価には前頭葉機能を評価するTrail Making Test Part A,海馬の短期記憶を評価するRey聴覚性言語学習検査,Rey複雑図形検査とし,臨床心理士がSTAI状態・特性不安検査を行い,状態不安が低いことを確認した上で実施した.各評価時期は口腔機能が低下している旧義歯装着時(以下Old Denture: OD),口腔機能が上昇した新義歯装着後3か月後(以下New Denture: ND),とした.ODと比較したNDの結果,口腔機能評価の咬筋筋活動量ならびに咀嚼能力は増加傾向を示したものの有意差は認められなかった.咬合力は有意に増加した.脳活動では,一次運動野,一次感覚野,前頭葉ならびに海馬に有意な賦活が認められた.認知機能検査においては,前頭葉機能検査TMT Aで有意な減少を示し機能向上を認めた.海馬に対するRey聴覚性言語学習検査の全即時記憶では有意に上昇を認め機能の向上を認めた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現状況では研究課題である「口腔機能障害の影響がヒト脳の認知機能に直接影響を及ぼす」を解明するために,実際の高齢者で口腔機能障害がある患者を対象に研究を進めることが出来ておりおおむね順調に研究は進んでいる.
認知機能検査に関しては,当初の予定では記憶のみの評価に止まっていたが,前頭葉機能を評価するTrail Making Test Part A,海馬の短期記憶を評価するRey聴覚性言語学習検査,Rey複雑図形検査とし,など認知機能検査を増やしより詳細に観察することができている.このことにより認知機能と脳機能活動と合わせたより詳細な検討が可能となってきた.脳活動に関して7TMRIを使用しており,研究開始当初では撮像パラメーターの設定に多くの時間を取られたが,現在パラメーターも確定して,脳活動を正しく評価できるようになっている.
結果においても予想された結果が得られており実験系として成り立つと考えている.しかし,被験者数が脳機能活動を正しく統計評価できる数まで到達しておらず,今後は更なる被験者の獲得が必要になる.また,高齢無歯顎者に対して高齢有歯顎者を対照群としたいが,岩手医科大学附属病院に来院する患者に研究対象条件を満たした者が少なく被験者の確保に課題がある.

今後の研究の推進方策

平成29年度に関しては,平成27・28年度に行った実験結果の解析をふまえ,口腔機能障害が認知・学習記憶に及ぼす影響について検討を行う.
被験者数に関しては予定数の20名まで確保できるように,実験を継続する.
得られたデータをまとめ社会,国民へ適切な情報を発信できるように論文にまとめる予定である.

次年度使用額が生じた理由

予定していた被験者の脳機能検査が,被験者の体調不良により延期になったため検査費を使用できなかったために生じた.

次年度使用額の使用計画

当該助成金は次年度で検査を行うため,その際に使用する予定である.

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公開日: 2018-01-16  

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