研究課題/領域番号 |
15K11180
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
宇野 光乗 朝日大学, 歯学部, 講師 (10298424)
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研究分担者 |
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70513670)
土井 豊 朝日大学, 歯学部, 名誉教授 (40116067)
石神 元 朝日大学, 歯学部, 教授 (20168214)
岡 俊男 朝日大学, 歯学部, 准教授 (30185409)
横川 善之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20358310)
玉置 幸道 朝日大学, 歯学部, 教授 (80197566)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジルコニア / RFマグネトロンスパッタリング / 圧縮せん断接着強さ / 親水性 |
研究実績の概要 |
ジルコニアコーピングを応用したオールセラミッククラウンは,強度と審美性を兼ね備え,患者のQOLを高める補綴装置として臨床応用されている.しかし,ジルコニアに有効な接着前処理のシステムは未だ開発されておらず,Siをほとんど含まないため,ポーセレンのためのシランカップリングシステムの有効性を期待できない.そこで,RFマグネトロンスパッタリング (以下,スパッタリング) により,ジルコニア接着面にSiの導入を試みた.ジルコニア表面のSiは,SEMで観察し,そのうえでEDX面分析と元素分析にて確認を行った.また,ジルコニア表面の親水性とその経日的変化についても検討を行った.接触角の測定は,超純水(MilliQ水)を10μl採取し,デジタル画面上で接触角を測った. 3,7,14,21日後に3回ずつ測定した値について,有意差検定 (p<0.01) を行ったところ,スパッタリングした試料の接触角は,スパッタリング時間(1時間と8時間)に関係なく,処理直後では0°であった.3,7日後は20~30°であり,14,21日後も40°以下であり,経時的に有意に大きくなったが,21日後でも40°以下を保持していた.さらに,シランカップリング処理後のSi導入ジルコニア試料とレジンコアをレジンセメントで接着し,圧縮せん断試験を行って,Si導入の効果を検討した.圧縮せん断接着試験は,試験片の接着部が破壊されるときの最大荷重(N)を測定し,これを接着面積で割った値を圧縮せん断接着強さ(MPa)として算出した.圧縮せん断接着強さは,control (9.26 MPa) と比較しスパッタリングYZ (30.86 MPa) は有意に大きな値を示した.以上のことから,スパッタリングによるジルコニア表面へのSi-Oの形成は表面を超親水性にし,シランカップリング剤との化学結合を可能にすることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①ジルコニアへのRFマグネトロンスパッタリングは,RFマグネトロンスパッタリング装置(グリーンテック)を用いて,高周波電力100W,スパッタリングガスAr (高純度99.9995%),ガス圧 5mmTorr,Ar:95%,O2:5%スパッタリングの時間は1,8時間の条件で行うことが出来た.②YZのスパッタリング前後の元素分析は,Neoc-Proネオオスミウムコータ(メイワフォーシス)を用いて導電処理(5 秒間)を施し,各試料表面を走査電子顕微鏡(S -4500,日立製作所)加速電圧30km/Vにて観察するとともに,エネルギー分散型X線分析装置(EMAX -7000,堀場製作所)を用いて,スパッタリング前,後の比較検討を行い,スパッタリング後にSiピークを確認することが出来た.③スパッタリングした試料の接触角は,スパッタリング時間(1時間と8時間)に関係なく,処理直後では0であった.3,7日後は20~30°であり,14,21日後も40°以下であり,経時的に有意に大きくなったが,21日後でも40°以下を保持していた結果が得られた.④圧縮せん断試験は,Control (ポーセレンプライマー塗布のみ)とスパッタリング後(スパッタリング後ポーセレンプライマー塗布)の接着条件で5個ずつ測定し,有意差検定(p<0.01)を行ったところ,control (9.26 MPa) と比較しスパッタリングYZ (30.86 MPa) は有意に大きな値を示し,スパッタリングによるジルコニア表面へのSi-Oの形成は,表面を超親水性にし,シランカップリング剤との化学結合を可能にすることが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
ジルコニアへの効果的な接着技法の確立を目的とし,以下の課題を遂行する. 1. RFマグネトロンスパッタリングによるSi注入条件の検討:ジルコニアへのスパッタリングは,RFマグネトロンスパッタリング装置(グリーンテック)を用いて,高周波電力100W,スパッタリングガスAr (高純度99.9995%),ガス圧 5mmTorr,Ar:95%-O2:5%の条件で行ったが,Ar:90%-O2:10%などの濃度比率の条件についても検討を行う.2. RFマグネトロンスパッタリングによるSi注入後のジルコニアの表面解析:Ar-O2濃度の条件を代えてRFマグネトロンスパッタリングした試料の表面解析を行う.方法は,試料に対してNeoc-Proネオオスミウムコータ(メイワフォーシス)を用いて導電処理(5 秒間)を施し,各試料表面を走査電子顕微鏡(S -4500,日立製作所),加速電圧30km/Vにて観察するとともに,エネルギー分散型X線分析装置(EMAX -7000,堀場製作所)にて元素分析を行う.3. 長期安定性の検討:RFマグネトロンスパッタリングによるSi注入後に,シランカップリング処理後に接着性レジンセメントを用いて接着を行い,その後,37℃の水中で24時間保管した後にサーマルサイクル0回,3,000回後に圧縮せん断接着試験を行い,接着の長期安定性について検討を行う.
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