研究課題
本研究課題の目的は,術後の顎口腔の形態を補綴装置の装着まで考慮した,再建外科手術のシミュレーションを行う方法およびコンピュータ支援による顎補綴方法を開発することである.本年度はまず下顎骨再建患者に焦点を当てて,以下の研究を行った.下顎骨再建のコンピュータシミュレーションを行うために,必要なデータおよび解析方法について検討した.既に再建術が施行された顎骨再建患者に同意を得てCTデータを入手し,顎骨再建の前後で3次元画像解析を行った.下顎骨は腓骨再建が行われることが多いことから,腓骨の3次元形状を構築し,どの様に骨片を切断し再び繋ぎ合わせるか,共同研究者と情報交換しながら検討した.CTデータを画像解析ソフトMimics(Materialise社)を使用してSTLデータへと変換し,更にFreeFrom(Geomagic社)を用いて顎骨欠損部と再建骨片を作成し,コンピュータシミュレーションを行った.腓骨は通常3㎝程度の骨片に切断して再建に利用することから,欠損部に適合して顎骨の形態に類似させるためには,欠損が大きい場合は腓骨を 3分割にする方法が形態を再現しやすいが,顎角部の形態をつくるためには2分割による方法が適していることが確認できた.今後は症例を増やしてデータベース構築に努めるとともに,形態と機能の関連性について検討する予定である.
2: おおむね順調に進展している
本研究の初年度においては,下顎の顎骨再建シミュレーションについての手法の開発とデータベースの構築が主な計画としていたので,ほぼ目標に達したと考えている.下顎骨の再建患者のCTデータより再建後の顎骨形態をモデル化し,腓骨データと共にシミュレーションによって再建した顎骨と実際の再建骨との違いを評価し,今後の顎骨再建に役立てる予定である.
今後の研究計画としては,構築したデータベースを更に充実させて,手術前に迅速に顎骨再建シミュレーションを行なえるように準備する.また,切断した骨片の界面形態に角度をつけて,より適合性のよい骨片形成ができるように,手術シミュレーションによって切断角度や接合面の形態を検討して,実際の手術に役立てられるようなデバイスの開発を試みる予定である.また,再建された顎骨と顔面形態との関連性についても,手術後の患者のQOLに大きく関係することなので顔面計測も実施し,再建による顔面形態の変化についても検討を行う.
本年度購入予定であったシミュレーションソフトウエアの購入を見送ったことにより,残額が生じた.その代わりに,新たに画像を動かす機能を持ったシミュレーションソフトウエアを次年度にリース契約する予定である.
次年度の研究費は,解析用のコンピュータと顔面形態の再現および解析用ソフトのリースに使用する予定である.また,10月に海外で行われる国際学会での発表および論文発表に関わる経費としても使用する予定である.その他に研究に関わる消耗品の支出や,共同研究者に分担する研究に関わる経費も計上する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
日補綴会誌
巻: 8(1) ページ: 1-9
J of Prosthodontics
巻: Aug 21 ページ: 1-5
10.1111/jopr.12338