アメリカ食品医薬品局が歯科用レーザーの使用方法について定義している治療の1つに“Coagulation of extarction sites;抜歯後のレーザー照射による血液凝固”がある。この治療に効果があると推奨しているレーザー装置が半導体レーザーと炭酸ガスレーザーであるが、この2種類はレーザー特性が異なる。これらのレーザー装置は実際の診療において抜歯後のレーザー照射の効果として有用であるという臨床報告が散見される。しかし、抜歯窩におけるレーザー照射の基礎的研究は半導体レーザーにおいて基礎的研究報告があるものの、照射条件(出力、照射モード、照射距離/時間/回数 等)に大きなバラつきがあり実際の臨床手技に準じていないため本来のレーザー照射の効果を検証することが困難であった。一方、炭酸ガスレーザーではほとんど報告がなかった。 そこで前年度までに確立した抜歯後のレーザー照射条件(抜歯直後の血液凝固のために約152J/cm2、抜歯翌日に組織賦活化のために約40J/cm2)にて、ラット上顎第一臼歯の抜歯後のレーザー照射を行った。その後、ラットを屠殺、抜歯窩を含めた周囲組織を摘出、脱灰薄切標本を作製し病理組織学的および形態計測学的に解析を行った。 その結果、2種類のレーザー特性の違いによるものと考えられる抜歯窩の創傷治癒形態の相違が確認できた。さらに抜歯窩治癒早期の段階においてレーザー非照射ラットに比べ、レーザー照射ラットでは抜歯窩内の器質化が促進され、その後の新生骨形成も早く骨梁も太く緻密であった。また抜歯窩粘膜の瘢痕組織形成に係る筋繊維芽細胞の発現もレーザー照射ラットでは有意に少なく、粘膜の陥凹やその直下の歯槽骨頂も高く維持できた。 以上より抜歯後のレーザー照射による創傷治癒の促進と歯槽骨の可及的な温存にとって有効であることが示唆された。
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