研究課題
近年,インプラント埋入後の初期安定性の獲得には,従来のオッセオインテグレーションのみではなく生体材料による骨組織との結合の重要性が注目されている.我々は純チタン金属表面にアルカリ処理を行うことで,チタニアナノシート構造(以下,TNS)を析出させ,骨分化誘導に有用であることを明らかにした.本研究では,この構造にインプラント埋入周囲組織の歯周組織の再生方法としてエムドゲインの主要タンパク質の一つであるアメロジェニンをスピンコート法によりコーティングすることで,更なる硬組織分化誘導を促す新規インプラント材料の創製を目指したところ,興味ある知見を得られたので報告する.XPSの解析ではアメロジェニン特有のピークを認め,TNS析出純チタン金属表面上にアメロジェニンがコーティングされていることが明らかとなった.ALP活性,オステオカルシン量およびカルシウム量は全ての計測時間において,実験群で対照群と比較して有意差が認められた.我々の過去の報告により,TNS構造は,ラット骨髄細胞の硬組織分化誘導能の向上に寄与することが明らかとなっている.今回の結果により,アメロジェニンのコーティングが早期の硬組織形成を促し,オッセオインテグレーションの期間が短縮されることが期待される.アメロジェニンは今回の実験で評価した硬組織形成誘導だけではなく歯周組織の再生の観点からも注目されている材料であることから,今後はin vitro評価による歯根膜細胞の利用も検討している.
2: おおむね順調に進展している
すでに平成28年度口腔インプラント学会学術大会近畿・北陸支部にてアメロジェニンをコーティングしたナノ構造と骨髄細胞の相関関係について学会報告を行っており、現在歯根膜細胞との相関について研究を行い、平成29年度日本口腔インプラント学会にて発表予定である。
歯根膜細胞と材料表面に関する詳細な報告は平成29年度に論文として纏める予定である。また、in vivoについてもすでに実験を開始しており、これに関しても報告予定である。
純チタン金属板の作製依頼が年度末になったため。
新年度、チタン板が完成次第支払う予定
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Journal of Osaka Dental University
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バイオインテグレーション学会雑誌
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