研究課題/領域番号 |
15K11186
|
研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
松浦 尚志 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (60330966)
|
研究分担者 |
篠崎 陽介 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (80736687)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | コラーゲン / 酸化ストレス / 骨粗鬆症 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
骨粗鬆症の病因論として,古典的なホルモン分泌の低下による骨形成と吸収のアンバランス論に加えて,近年酸化ストレス論が注目されてきた.酸化ストレスによって骨形成の減少と骨吸収の増加が起こることが明らかとなってきたが,骨質の低下に関しては不明な部分が多い.我々は骨質の最も重要な因子であるコラーゲンマトリックスに着目して,骨芽細胞様株化細胞のMC3T3-E1細胞が産生するコラーゲンマトリックスに及ぼす過酸化水素の影響を調べた. MC3T3-E1細胞は0.4 mM以上の濃度の過酸化水素で死に至ってしまうため,0.3 mM以下の濃度を実験に供した.まず,MC3T3-E1細胞のアルカリフォスファターゼ活性は0.05 mMの過酸化水素では影響を受けなかったが,0.1 mM以上の過酸化水素によって有意に低下した.マトリックスのピクロシリウスレッド染色後の偏光顕微鏡下での色調は0.025 mMまでの過酸化水素ではオレンジ色から黄色を呈しており,コラーゲン線維が太い状態を示唆していた.しかし,0.05 mMの過酸化水素によって色調に緑色が含まれ始め,0.2 mM以上では全面緑色を呈し,コラーゲン線維が細くなっていることを示唆した.アリザリンレッド染色によるマトリックスの石灰化を定量したところ,コラーゲン線維の変化と同様に,0.05 mMの過酸化水素によって有意に石灰化が低下し,0.3 mMまで濃度依存的に石灰化は低下した.以上より,過酸化水素による酸化ストレスは骨芽細胞の分化を抑制するのみならず,骨芽細胞が産生するコラーゲンの線維形成を抑制し,同時に石灰化を抑制することがわかった.さらに,コラーゲン線維形成に関わる因子の動態を調べる予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸化ストレスによるマトリックスの影響の現象にふり幅が大きく,確定するのに時間を要したため.
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに明らかになっているコラーゲン線維を抑制する因子(Ⅴ型コラーゲン,コラーゲン翻訳後修飾関連酵素群,コラーゲンシャペロン分子群,コラーゲン結合性プロテオグリカン)の遺伝子発現の変化を調べ,過酸化水素によるコラーゲン線維の狭小化のメカニズムを探る.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に行うrealtime PCR分析に費用がかかるため,倹約した.
|
次年度使用額の使用計画 |
Realtime PCR分析では,まずhouse-keeping geneを10種類試し,最も適したものをまず選定する.テストする遺伝子は12種類程度を予定しており,また実験群はコントロールとテスト群2群を予定している.
|