研究課題
体幹と頭部の姿勢が、食物取りこみ運動、咀嚼運動に与える影響を明らかにすることを目的に、モーションキャプチャーと筋電計を用いて、摂食における、頭部・体幹・下顎の運動を記録解析した。これまで、「安全な嚥下」に配慮した姿勢が、「円滑な咀嚼」を阻害する可能性について検討してきたが、さらに食事介助に伴って誘発される姿勢の変化も、摂食運動に影響を与えるのではないかという仮説に対し、以下の実験解析を行った。健常者14名において、食事介助を想定して介助者1名が食物を被験者の口腔に取り込ませる場合の運動様相を調べた。被験者はイスに無拘束で着座し、介助者がリンゴ片を刺したフォークを手に持って3種の方向から被験者にリンゴを食べさせた。また比較のため自力摂取を想定して、被験者自身でフォークを把持してリンゴを食べるタスクも施行した。介助を受ける場合、食物が上方から向けられる場合には、食物が近づくにつれて被験者の頭部は後屈方向へ、下方から向けられる場合は前屈方向へ変化していた。口腔においては、介助を受ける場合は自力摂取の場合に比べ食物を口腔内に取り込む時間が長く、また介助の方向が高いほうが延長する傾向がみられた。延長するのは、最初の開口および食物を前歯・口唇で把持して引き抜くと推測される動作であった。このように食事介助において食物を向ける方向は、被介助者の姿勢および食物の口腔とりこみ運動に影響を与えることが明らかとなった。このことから、食事介助に伴って誘発される姿勢の変化も、捕食における口腔の運動に影響を与えることが示唆された。
すべて 2017
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Journal of Oral Rehabilitation
巻: 45 ページ: 17~24
10.1111/joor.12578