研究課題/領域番号 |
15K11196
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
友竹 偉則 徳島大学, 大学病院, 准教授 (70263853)
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研究分担者 |
内藤 禎人 徳島大学, 大学病院, 助教 (20509773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チタン / チタン-ワックス / 焼結体 / 補綴装置 / チタンフレーム |
研究実績の概要 |
本研究は、我々がこれまでに開発した多孔性チタン焼結体の製作方法を歯科補綴に応用することを目的とする。この方法は、チタン粉末とバインダーとしてワックスを混練した混合体を任意の形態に形成し、そのまま焼結過程を経てチタン焼結体を製作するものである。 本研究では、ワックスに混和するチタン粉末の粒径や各粒径の混合率を調整し、所定の機械的強度を有し、焼結収縮を制御できるような材料設計を探索する。 試料とするチタン焼結体として、市販のチタン粉末(ニラコ社製、タイロップ社製、他)を遠心分離機で篩にかけ、粒径(45μm以下、150μm以下、150μm以上)ごとに分別した。我々が開発した方法における混練比率(チタン90%:ワックス10%)で混和した7種(①粒径45μm以下の円形、②粒径45μm以下の不正形、③粒径150μm以下、④粒径150μm・75wt%+45μm・15%、⑤粒径150μm・80wt%+45μm・10wt%、⑥粒径150μm以上の円形,⑦粒径150μm以上の不正形)の混合体を成形し、熱処理(大気中380℃で脱脂、アルゴン雰囲気中1100℃で焼成)によって試験片を作製した。 SEM観察によって粒間の溶着の状態を観察した後、物性評価を行った。焼結による収縮率の測定では直径6mm×10mmの円柱状試験片の焼結前後の寸法比で算出した。収縮率は2.5%~14.2%であり、粒径の小さい試験体ほど収縮率は高かった。気孔密度の測定には同試験片の水中浸漬による吸水率から算出し、17.7%~38.5%であった。機械的強度では、4mm×7mm×20mmの短冊状試験片を曲げスパン15mm、クロスヘッドスピード1mm/minの破断荷重で曲げ強さを算出し、粒径の小さい45μm以下の群で高く、150μm以下の群でも小さい径を混和することで強度が増加することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本方法は、チタン粉末とバインダーとしてワックスを混練した混合体を任意の形態に形成し、そのまま焼結過程を経てチタン焼結体を製作するものである。よって、混和するチタン粉末の粒径や各粒径の混合率が物性、機械的強度に大きく影響することが考えられるが、実際に測定、評価はされていないため、先ず、粒度ごとの基本的物性を測定することを計画した。 チタン粒径および形態ごとで7種類のチタン焼結体を製作し、SEMによる焼結状態の確認と基本的な物性である収縮率、気孔率を測定し、また、機械的強度としての曲げ試験、圧縮試験を行った。さらに、このチタン-ワックスに特徴的な使用法としての既製チタンコンポーネントへの溶着を、チタン板に溶着させた焼結体の破断試験を行って評価した。 チタンの粒度が小さいほど、収縮率は高く,補綴装置としての適合性には問題があるが、機械的強度は大きく、補綴装置としての要件に沿うものであった。一方、粒度の大きい群では、収縮率が低く、適合性には望ましいものであったが、機械的強度は有意に低かった。 このように、チタンの粒度に影響される基本的物性を測定し、補綴装置に必要な所定の物性と比較することで、本方法の臨床応用への可能性を評価した。次のステップとして、この粒度-物性の評価を基に、補償方法を検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な物性評価から,歯科補綴に重要な適合精度に影響する収縮率や,補綴装置として求められる機械的強度を向上させるための収縮補償や補強効果を評価する。 複数のインプラントレプリカを埋設した寸法規格化したモデル上で,チタン製コーピングを装着し,上部構造フレームをチタン-ワックスで焼結して製作し,その適合度合い及び機械的強度を測定する。次いで,レーザー溶接を用いてチタンロッドをコーピング間に連結固定し,同様にチタン-ワックスを焼結しフレームを製作する。本補償方法による適合精度及び機械的強度を測定し,補償法の有効性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験体である焼結体を製作するためのファーネスが故障し、修理費用が次年度に必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
作業計画には変更なく、実際の臨床応用の方法としての補償法を明らかにした後、CAD/CAM 製作法への応用を評価する予定である。
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