研究課題/領域番号 |
15K11197
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永尾 寛 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 准教授 (30227988)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | サルコペニア / 摂食嚥下 / オトガイ舌骨筋 |
研究実績の概要 |
本研究では咀嚼・嚥下機能に重要な役割を果たすオトガイ舌骨筋に着目し、加齢に伴うオトガイ舌骨筋の形態的変化と口腔機能(咀嚼機能、嚥下機能)の低下との関連性を明らかにすることを目的とした。 まず、咀嚼機能の低下がオトガイ舌骨筋の筋組成へ与える影響を調べるために、24週齢のラット20匹を、上顎両側臼歯部を抜歯した実験群と対照群に各々10匹ずつ分け、60日間飼育した。飼育後、摘出したオトガイ舌骨筋および咬筋からサンプルを調整し、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロットによりMyosin Heavy Chain(MyHC)のサブタイプを指標として筋組成を調べた。結果、抜歯群では非抜歯群と比較し、咬筋、オトガイ舌骨筋ともにタンパク質レベル、mRNAレベルで速筋タイプ(MyHCⅡ)の発現が有意に上昇しており、咀嚼機能の低下によってミオシンタイプの速筋化、すなわち廃用性筋萎縮が生じることが示唆された。 次に、嚥下機能の低下とオトガイ舌骨筋の変化との関連を検討するために、60名の健常者を対象に、超音波測定装置を用いてオトガイ舌骨筋の断面積を計測し、身体状況(身長、体重、BMI、頸囲)口腔関連項目(残存歯数、咬合支持数、舌圧、開口力)、咀嚼機能(咀嚼スコア、咀嚼のVAS値)、嚥下機能(嚥下スコア、嚥下音持続時間)との関連を調べた。結果、オトガイ舌骨筋の断面積と年齢、開口力、舌圧、咀嚼スコア、咀嚼のVAS値、嚥下音持続時間との間に有意な相関を認め、さらに嚥下音持続時間を従属変数とした重回帰分析では、有意な説明変数としてオトガイ舌骨筋断面積と咀嚼スコアが選択された。結果、オトガイ舌骨筋断面積の形態的変化は嚥下機能低下を予測し得る有効な因子である可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の当初の予定では、ラットを用いた研究のみ行う予定であったが、飼育期間が2ヶ月必要であったため、研究の効率化を図るために同時進行で超音波測定装置による研究を進めた。オトガイ舌骨筋断面積の評価に際し、超音波測定装置による測定方法を確立するために、プローブの位置、角度について三次元トラッキングシステムにより規格化し、若年者数名を対象として再現性を確認した。現在、若年者、高齢者あわせ60名までデータを採取しているが、目標とする100名には到達していないため、現在の達成度をおおむね順調に進展しているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
ラットを用いた研究では、MuRF-1やCbl-bなど筋萎縮関連ユビキチンリガーゼの発現を調べることで咀嚼機能の低下によるオトガイ舌骨筋の廃用性筋萎縮発症の分子メカニズムを検討していく予定である。また、オトガイ骨筋以外の舌骨上筋群(顎二腹筋、顎舌骨筋)も同様に進めてく予定である。 超音波測定装置を用いた研究では、対象者をさらに増やして研究を進めていく予定である。また、嚥下障害のある人も対象に含め、嚥下障害の有無とオトガイ舌骨筋の形態的機能的変化との関連を模索していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験全体の時間配分を考慮し、ラットを用いた基礎研究と臨床研究を同時に行うことになったため、基礎研究の進捗が遅れた。それに伴い基礎研究のための消耗品費の使用が減少した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度では、27年度に行う予定であった基礎研究を継続して行うため、27年度からの繰越金を使用し消耗品を購入してする予定である。
|