研究課題/領域番号 |
15K11197
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永尾 寛 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 准教授 (30227988)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 摂食嚥下 / サルコペニア / オトガイ舌骨筋 |
研究実績の概要 |
高齢者では、加齢に伴い嚥下機能低下を認めることはよく知られており、老人性嚥下機能低下(Presbyphagia)という概念が存在する。 Presbyphagiaの原因の一つとして全身の筋量低下(サルコペニア)があり、これが嚥下関連筋の筋量低下に関与している可能性がある。本研究では、サルコペニアと摂食嚥下関連筋の筋量低下との関連性、サルコぺニアと摂食嚥下機能との関連性を明らかにすることで、Presbyphagiaの段階での摂食嚥下障害の早期発見、早期介入につなげることを目的とした。そこで、咀嚼・嚥下機能に重要な役割を果たすオトガイ舌骨筋に着目し、加齢に伴うオトガイ舌骨筋の形態的変化と口腔機能(咀嚼機能、嚥下機能)の低下との関連性を明らかにすることとした。 103名の健常者を対象に、超音波測定装置を用いてオトガイ舌骨筋の断面積および水10ml嚥下時の筋収縮速度を計測し、身体状況(身長、体重、BMI、頸囲)、口腔状況(残存歯数、咬合支持数、舌圧、開口力)、咀嚼機能(咀嚼スコア、咀嚼のVAS値)、嚥下機能(嚥下スコア、嚥下音持続時間)との関連を調べた。 共分散構造分析の結果得られたパス図では、咀嚼機能、嚥下機能ともにオトガイ舌骨筋の断面積は舌圧、開口力に有意な正の影響を与えていた。咀嚼機能においてはさらに、舌圧から咀嚼スコアへ有意な正の影響が存在したことから、断面積は舌圧を介して間接的に咀嚼機能へ影響を与えている可能性が示唆された。嚥下機能では断面積から嚥下音持続時間へ有意な負の影響が存在し、オトガイ舌骨筋の断面積の低下は嚥下音持続時間の延長につながる可能性が示唆された。 嚥下音持続時間の延長は喉頭侵入、誤嚥等の嚥下障害のリスクの増加を意味することから、嚥下機能の低下を予測する上で、オトガイ舌骨筋の形態的変化は有効な因子となり得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度で目標とする100名に到達し、オトガイ舌骨筋の断面積と咀嚼機能、嚥下機能とのより詳細な関係性について明らかとなった。したがって、現在の達成度をおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
前年度ではラットを用いた研究により、歯の喪失に伴ってオトガイ舌骨筋に廃用性筋萎縮が生じる可能性が示唆され、本年度ではヒトを対象とした研究によりオトガイ舌骨筋の断面積の低下が咀嚼機能の低下、嚥下機能の低下につながる可能性が示唆された。 咀嚼機能においては、オトガイ舌骨筋の断面積の低下は舌圧を介して咀嚼機能の低下につながる可能性が示唆され、咀嚼機能における舌の重要性を再確認できたが、舌において舌圧以外にも舌の筋量や機能(巧緻性等)が咀嚼機能に影響を与えている可能性がある。 したがって、次年度では、舌の形態、筋力、機能のうち咀嚼機能の低下に最も影響を与えているものがどれなのかを明らかにするために、実験項目、対象者をさらに増やして研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に目標とする被験者数に達し、計画通りであったが、消耗品費の値引き等により使用額が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度では被験者を追加する予定であり、これらの経費を使用し追加の消耗品を購入して研究を進めていく。
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