研究実績の概要 |
本年度も口顎ジストニア治療における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果について検討を行った。結果は,1月のニューヨークで開催されたNEUROMODECで報告し,本年6月30日からの日本補綴歯科学会では‘口顎ジストニア治療における経頭蓋磁気刺激の効果’を,また,7月29日からの日本顎関節学会・日本口腔顔面痛学会併催では‘QOLを指標とした口顎ジストニア患者への反復経頭蓋磁気刺激の効果について’の発表を予定している。一方,本年度は,オランダのマーストリヒトで行われたrTMS研修も受けるとともに,顎関節学会では顎関節症とジストニアの鑑別について研鑽を積むことができた。研究内容の要旨は,口顎ジストニア7名(平均年齢64.3歳,男性1名,女性6名)を対象とし,病悩期間は平均1.4±1.2年で,また,運動障害は,会話が7名中7名に,咀嚼が7名中5名に,顎運動が7名中5名に,そして嚥下が7名中4名に認めた。経頭蓋磁気刺激は両側それぞれの一次運動野に1Hzで500回の刺激を行い,その時の刺激強度は顎舌筋の収縮を視覚的に確認して決定した。経頭蓋磁気刺激は10回の繰り返しとし,治療間隔は平均12.4±2.4日で,治療期間は平均111.4±21.6日であった。治療効果の評価には,運動困難自覚強度ならびに疼痛自覚強度をNumerical Rating Scaleで,精神心理的評価は Symptom Checklist-90-Revised (SCL-90-R)とHospital Anxiety and Depression scale (HADs)で行った。ジストニアスケールとしてはThe Fahn-Marsden rating scaleを,咀嚼能力評価としては咀嚼スコア,OHIPとSF-36を応用した。結果)運動困難自覚強度,疼痛自覚強度、 The Fahn-Marsden rating scale、咀嚼スコアには反復経頭蓋磁気刺激による有意な改善が示された。また,身体的QOLには有意な差異は示されなかったが,口腔QOLには反復経頭蓋磁気刺激による有意な改善が示された。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画としては、主に、国際誌への論文投稿に向けての英文校正料、論文掲載料として充てる、とともに本年度の本研究課題の遂行上、生じうる必要経費、なかでも消耗品の購入や国内学会等への出張旅費に充てる考えである。また、質問表による機能障害の自覚強度・ジストニアスケール・口腔QOL(Quality of Life)、ならびに安静時の感覚運動皮質活動性(NIRSデータ)から示されるであろう、最新の本研究データ、「口下顎ジストニアに対する経頭蓋磁気刺激の治療効果」については、Neuroscience Meeting, Neuro- modulation,などの国際学会で発表したいと考えているので、可能であれば、これらへの海外出張旅費にも充てたいと考えている。
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