平成30年度は、口顎ジストニアの一次運動野への経頭蓋磁気刺激による、運動困難自覚ならびに疼痛自覚、QOL、うつと身体化、さらに感覚運動皮質の活動性への影響を検討した。 被験者は、口顎ジストニア6名(男性2名、女性4名、平均年齢77.8歳)である。診査項目は、Toronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale、頸部ならびに顎顔面における運動困難自覚ならびに疼痛自覚のNumerical Rating Scale、顎機能検査プロトコールによる咬合、口腔内診査ならびに、健康関連QOLと口腔関連QOLで、精神心理テストにはHADS、SCL-90-Rを用いた。 脳活動計測には近赤外光イメージング装置、OMM-3000(島津製作所製)を用いて、安静3分間におけるoxy-hemoglobinを0.13秒毎に48チャンネルで計測した。また、一次運動野の刺激には経頭蓋磁気刺激装置、マグプロシステムR30(Mag Venture社製)を用いた。刺激部位は顎口腔筋の収縮が誘発される頭蓋部位で一次運動野領域に相当し、その強度は筋収縮の誘発閾値とした。刺激回数は両側一次運動野それぞれに1Hz 500回とし、刺激の間隔と期間は、2~3週(間隔:平均18.8日間)毎の計10回(期間:平均169.5日間)である。 結果として、一次運動野への経頭蓋磁気刺激は、口顎ジストニアの1)口腔関連QOL の有意な向上とともに、2)運動困難自覚ならびに疼痛自覚、3)SCL-90-Rのうつ尺度と身体化尺度、ならびに4)一次感覚運動野、運動前野、補足運動野の活動性を有意に軽減した。 以上のことから、口顎ジストニアの一次運動野への経頭蓋磁気刺激は、運動困難自覚と疼痛自覚、口腔関連QOL、うつと身体化、過剰の感覚運動皮質の活動性、などを有意に改善させるものと考えられた。
|