研究課題/領域番号 |
15K11202
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
谷本 安浩 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (40312045)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ノンメタルクラスプデンチャー / ファイバー強化熱可塑性プラスチック / 機械的性質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は優れた審美性と機械的性質を有するノンメタルクラスプデンチャー用材料を開発することである。本年度においては、グラスファイバー強化ポリプロピレン樹脂ペレットを基材として、射出成形によってグラスファイバー強化熱可塑性プラスチック(GFRTP)を作製した。またノンメタルクラスプデンチャー用材料としての最適設計を行うために、グラスファイバー含有率を段階的に変化させた試験体(0、5、10、20、30、40、50 wt%の計7種類)を作製し、機械的強度試験を行なった。さらに市販ノンメタルクラスプデンチャー材料(NMCD)およびアクリル系義歯床用材料(PMMA)の物性と比較することで、試作GFRTPにおけるファイバー補強効果について評価した。 作製した各ファイバー含有率のGFRTPにおける密度の実測値は理論値と一致しており、ファイバーの含有量を変えても空隙等の大きな欠陥のない成形性の高い試験体を得ることができた。曲げ試験の結果、曲げ強さおよび弾性係数の値はファイバー含有率の増加に伴って大きくなった。またファイバー含有率10 wt%および20 wt%のGFRTPはPMMAと同等の曲げ挙動を示した。さらにグラスファイバー含有率20 wt%以下のGFRTPおよびNMCDはたわみ10 mmまで荷重を加えても破折せず、高い延性を示した。一方、グラスファイバー含有率30 wt%以上のGFRTPはNMCDおよびPMMAに比べて、著しく高い剛性を示し、試験後のサンプル下部に引張応力による破折が確認できた。一般にGFRTPのノンメタルクラスプデンチャーへの臨床応用を考えた場合、維持部が破折しないような高い延性と床が変形しない程度の剛性が要求されるため、本研究の結果からグラスファイバー含有率10~20 wt%のGFRTPが新規ノンメタルクラスプデンチャー材料として最適であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、審美性および機械的性質に優れる新規ノンメタルクラスプデンチャー材料の材料設計・開発を行うことが目的である。本年度(平成27年度)においては、グラスファイバー強化ポリプロピレン樹脂ペレットを出発材料とし、ノンメタルクラスプデンチャー用射出成形機を用いることで、熱可塑性樹脂をグラスファイバーで強化した、グラスファイバー強化熱可塑性プラスチック(GFRTP)を簡便に作製することに成功した。さらにGFRTPの最適な材料設計を行うために、マトリックスとして複数の熱可塑性樹脂を用い、またファイバー含有率を段階的に変化させたGFRTPを作製し、そのキャラクタリゼーションを行なった。その結果、GFRTPのノンメタルクラスプデンチャーへの応用を考えた場合、GFRTPのマトリックスにはポリプロピレンが非常に適していることが分かった。またグラスファイバー含有率10~20 wt%のGFRTPが剛性と延性の両方を兼ね備えており、新規ノンメタルクラスプデンチャー材料として有効であることを見出した。これらの研究成果については、研究初年度にもかかわらず国内・国際学会において研究発表を行い、社会に報告することができた。 以上のことから、研究遂行当初の目標を十分に達成しており、本研究は順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた研究結果を踏まえて、審美性および機械的性質に優れる新規ノンメタルクラスプデンチャー材料を開発するため、グラスファイバー強化熱可塑性プラスチック(GFRTP)の開発研究をさらに推し進める予定である。具体的には、GFRTPの口腔内での着色性について明らかにするため、コーヒー液などを用いた浸漬試験を行ない、浸漬前後の色調変化を色彩色差計により測定する。その際、NBSユニット(米国標準局単位)を用いて臨床的な許容範囲を決定する。同様にGFRTPの吸水・溶解性などについても評価・検討を行う。これらにより、機械的性質および化学的安定性の両面の観点から、ノンメタルクラスプデンチャーとして最適なGFRTPの材料設計を実施する。最終的には実際に作業模型上でGFRTPを用いたノンメタルクラスプデンチャーを作製し、臨床的な有用性について明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度(平成27年度)の研究経費において、国際学会(6th international Conference on Mechanics of Biomaterials and Tissues)での学会発表に必要な旅費を計上していた。当初の予定通り、本国際学会に参加し、研究成果の発表を行なったが、予想していたよりも研究発表に係る旅費を低額に抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究は順調且つ効率的に進展しており、次年度(平成28年度)以降も継続して得られた研究成果を国内・国際学会で発表することが予想されるため、次年度に繰り越した費用については今後のさらなる研究成果の発表・報告に係る費用に充てる予定である。
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