研究課題/領域番号 |
15K11202
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
谷本 安浩 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (40312045)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ノンメタルクラスプデンチャー / ファイバー強化熱可塑性プラスチック / 色調安定性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は優れた機械的性質と審美性を併せ持つノンメタルクラスプデンチャー用材料を開発することである。本年度(平成28年度)においては、GFRTPに歯肉色を付与するため、顔料添加量(0、1、2、4 wt%)がGFRTPの色調変化および機械的性質に及ぼす影響について検討した。さらにGFRTPの口腔内での色調安定性について明らかにするため、コーヒー液を用いた浸漬試験を行ない、浸漬前後の色調の変化(色差)を色彩色差計により算出した。さらに得られた色差の値をNBSユニット(米国標準局単位)に換算して臨床的な評価基準により評価を行った。これらにより得られた結果を以下に示す。 1)顔料添加量の違いによるGFRTPの色調変化を肉眼的に観察した結果、顔料2 wt%のGFRTPは義歯として適した歯肉色を有し、さらに樹脂とガラス繊維の両者の色彩の調和を図ることができ、最も審美的に優れていた。同様に色彩色差計を用いた色差評価の結果、顔料2 wt%のGFRTPがコントロールである市販ノンメタルクラスプデンチャー材料との色差が最も低い値となり、義歯として最適であることが判明した。その一方、GFRTPの曲げ強さおよび曲げ弾性係数ともに顔料添加(0~4 wt%)による明らかな変化は認められなかった。 2)コーヒー液への浸漬試験の結果、4週間浸漬後のGFRTPは肉眼的に著しい変色や着色は認められなかった。またNBS単位による定量的な評価の結果、審美性に影響するような色調変化を認められず、臨床的許容範囲であることが分かった。 以上の結果から、新規ノンメタルクラスプデンチャー材料として、顔料2 wt%添加したGFRTP(ファイバー含有量10~20 wt%)が有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、審美性および機械的性質に優れる新規ノンメタルクラスプデンチャー材料の材料設計・開発を行うことが目的である。去年度(平成27年度)においては、グラスファイバー強化ポリプロピレン樹脂ペレットを出発材料とし、ノンメタルクラスプデンチャー用射出成形機を用いることで、熱可塑性樹脂をグラスファイバーで強化した、グラスファイバー強化熱可塑性プラスチック(GFRTP)を簡便に作製するためのシステムを開発した。またGFRTPにおけるグラスファイバー含有量の影響を検討した結果、グラスファイバー含有率10~20 wt%のGFRTPが剛性と延性の両方を兼ね備えており、新規ノンメタルクラスプデンチャー材料として有効であることを見出した。本年度(平成28年度)においては、前年度の機械的性質に加え、GFRTPの義歯としての審美的要素についての検討を行った。その結果、顔料2 wt%添加したGFRTPは義歯として適した歯肉色を有していることが確認できた。さらにGFRTPの口腔内装着時の飲食物などによる着色性および色調安定性を明らかにするため、コーヒー液への浸漬試験を実施した。その結果、GFRTPの色調変化は臨床的許容範囲であり、色調安定性に優れていることが示された。以上の事より、現在までに機械的性質および審美性を考慮したノンメタルクラスプデンチャーの開発に関するGFRTPの最適材料設計を実施することができた。またこれらの研究成果については、国内・国際学会において研究発表を行い、さらには国際学術誌においても発表するなど、社会に報告することができた。 以上のことから、研究遂行当初の目標を十分に達成しており、本研究は順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた研究結果を踏まえて、審美性および機械的性質に優れる新規ノンメタルクラスプデンチャーの実践的な製作システムを確立するため、グラスファイバー強化熱可塑性プラスチック(GFRTP)の開発研究をさらに推し進める予定である。具体的には、前年までに得られた機械的性質および審美性に関する結果に基づいて最適設計したGFRTPを作製し、実験的な機械的評価試験を実施する。またGFRTPの口腔内での力学的特性を予測するために、有限要素解析を用いた数値シミュレーションを行い、GFRTPを応用したノンメタルクラスプデンチャーの形状などの最適設計を実施する。以上により得られた実験および解析結果の両面から、優れた機械的性質を有するGFRTP製ノンメタルクラスプデンチャーを製作するシステムを構築し、その臨床的な有用性について明らかにする予定である。
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