本研究の目的は、優れた機械的性質と審美性を併せ持つノンメタルクラスプデンチャー(NMCD)用材料を開発することである。昨年度までに、新規NMCD用材料として、グラスファイバー強化熱可塑性プラスチック(GFRTP)を開発し、その曲げ特性や色調安定性について明らかにしてきた。本年度(最終年度)においては、NMCDにおけるクラスプ部の構造設計を目的とした、GFRTPの片持ち梁試験および有限要素解析(FEA)を実施し、実験および解析の両面からクラスプ部の維持力について評価・検討した。また、GFRTPの摩擦摩耗特性を明らかにするために、GFRTPの摩擦摩耗試験を行い、その摩擦係数の値を算出するとともに、試験後の摩耗量の測定を行い、市販NMCD用材料およびアクリル系義歯床用材料と比較・検討した。これらにより得られた結果を以下に示す。 1)片持ち梁試験の結果、0.75mmのたわみ量を与えた際の荷重値について、GFRTPは市販NMCDに比べて有意に大きかった。また、FEAの結果、GFRTPの荷重値は試験片厚およびたわみ量の増加に伴い大きくなった。実験と解析の結果から、アンダーカット量の設定やクラスプ厚を調整することでクラスプの維持力をコントロールでき、適切な維持力を得られることが分かった。 2)GFRTP材料および市販NMCD用材料の摩擦係数は、アクリル系義歯床用材料と比較して、有意に低かった。また、本研究で得られたGFRTP表面の摩耗幅と、GFRTP表面の機械的特性(ダイナミック硬さ、弾性係数)との間には、負の相関性があることが確認できた。 以上の結果から、GFRTPは適切なクラスプの維持力を付与でき、またGFRTPの微小表面領域の機械的特性から摩耗量を推定できるため、症例に応じて設計できるテーラードマテリアルタイプの新規NMCD用材料として期待できることが示唆された。
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