研究課題/領域番号 |
15K11205
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
鶴田 昌三 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (40183488)
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研究分担者 |
伴 清治 愛知学院大学, 歯学部, 非常勤講師 (10159105)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジルコニア / ぬれ / 歯磨 / 加熱 / 歯科 / 機械的性質 |
研究実績の概要 |
歯科用ジルコニア修復物は水へのぬれ性に劣ることが知られている。我々は歯磨がジルコニアのぬれ性を向上させることを見出し、そのメカニズムを検討し、臨床応用への準備をしている。これまでに、このメカニズムを発展させ、短時間加熱処理によって、同様な優れたぬれ性を獲得することを明らかにした。現在、加熱処理による種々の実験を遂行している。 1. インプラントに応用するため、細胞培養試験を行った。700℃で加熱した試料上にマウス繊維芽細胞由来L929細胞およびマウス頭蓋骨骨芽細胞様細胞由来MC3T3-E1細胞の二種類の細胞を用い培養した。3日後、両細胞とも加熱試料上の細胞数は非加熱のジルコニアおよび細胞培養プレートに細胞を播種したものに比べ、有意に多かった。700℃短時間加熱により、ぬれ性が改善され、細胞増殖に有利な環境が形成されたためと考える。本方法はジルコニア表面を親水化し,簡便なインプラント体前処理として有効であると考える。 2. 加熱によるジルコニアの機械的性質への影響を検討するため、シャルピー衝撃試験に着目した。PMMA、PEEK、CAD/CAM用コバルトクロム合金と比較したところ、ジルコニアはきわめて低い衝撃強さを示し、衝撃に弱いことが明らかになった。 3. オーダーメードのジルコニアインプラントを作製する場合、半焼結体表面のテクスチャーを削る際に関係する強度を知るために、ジルコニアインゴットの圧縮強さを測定しようと試みた。石膏のJISに準じて試験しようとしたところ、試験法は2016年に改正されたので、改正前後の試験方法で石膏の圧縮強さの数値が異なるか否かを検討した。その結果現行JISの方法による数値が15%程度大きく計測されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度にジルコニアのぬれ性を高める新しい方法、すなわち短時間加熱法を開発し、平成28年度は本方法が細胞増殖能に与える影響を検討し、日本歯科理工学会にて発表した。またジルコニアの機械的性質への影響を判断するために、シャルピー衝撃試験に着目し、他材料との比較を行い、日本歯科理工学会の国際学術講演会IDMC2016にて発表した。さらに他の機械的性質の測定法の評価を行うため、無機材料とくに石膏の圧縮試験法について、2016年改正のJISに規定の試験法による評価と以前のJISに規定の試験法による評価を比較検討し発表した。しかし平成28年度は歯磨や加熱処理による表面の化学的変化をXPSを使用して評価し、低温劣化への影響を検討する予定であった。細胞増殖試験と機械的性質の評価を優先したので、本年度は表面性状を評価しなかった。加えて新たな着想を得て、CAD/CAM用ハイブリッドレジンとの比較に着手した。このため遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の不足項目および臨床応用に向けての実験を行い、成果を収束する予定である。 1. 加熱処理および歯磨処理したジルコニア表面の変化をXPSを使用して評価する。所属研究機関はXPSを保有していないので、本研究資金によって他機関に委託する。このことによって表面の変化を同定できると考える。 2. ぬれ性を向上させたジルコニアの接着試験を行う。ジルコニアクラウンと支台歯間の接着を問うのではなく、ジルコニア製矯正用ブラケットと歯牙、またはジルコニアクラウンと矯正用ブラケットの接着を念頭に置き、実験を行う。すなわち加熱処理または歯磨処理を施したジルコニアとエナメル質、ハイブリッドレジンなどとの接着試験について、4-METAに代表される接着性モノマーの作用を追及する。この結果より、口腔内でのジルコニアと歯牙やその他の修復物との接着法を確立できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析機器(XPS)を借用する計画であったところを、別の課題を優先したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に分析機器借用代金として使用する。
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