実験計画書に基づいて平成28年度は下記の項目について実験を行った。実験では、マウス頭蓋冠由来細胞MC3T3-E1細胞(RIKEN)を用いた。試作したアパタイト多孔体上に播種し、培地中で一定期間培養し、種々の実験を行った。 実験では、αTCP含有量をを0から100%まで変化させた試料を用いたが、αTCPは溶解性が高いためαTCPの含有量が20%以上の試料では培養液に浸漬した直後からαTCPから溶解してくるリン酸によりpHの著しい低下が認められた。 前年度までの実験結果から、αTCPとリン酸溶液、またはMCPMに代表されるリン酸カルシウム溶液とあらかじめ練和することにより、αTCPからのDCPDの再析出を促進し、ハイドロキシアパタイトへの相変換を促進することを利用した。多孔体作成時にMCPM溶液に一定時間浸漬しハイドロキシアパタイトの析出を促進し十分な多孔構造が構築されてから、過剰なリン酸を洗浄した後に滅菌したものを使用した。 まず、最初に多孔体化していない試料での初期評価を行った。初期細胞接着の評価を行ったところ、αTCP含有量が20%以上の試料では良好な接着を得ることが困難であることが明らかになった。次に経時的に細胞増殖を計測して細胞増殖能を評価した。初期接着と動揺に細胞播種後3日目にはαTCP含有量が20%以上の試料では著しく細胞数が低下したが、αTCP含有量が20%以下の試料では良好な増殖能を示した。これらの結果を評価したところ、Ca/P比が1.5のαTCPはCa/P比1.67の量論アパタイトに比べてリンが過剰であるために、埋入前に十分なアパタイトへの相変換を行った多孔体の使用が望ましいことが明らかになった。
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