今年度は昨年度の結果を踏まえ、使用するポリリン酸ナトリウム(ポリリン酸と呼称す)の選択を検討し直すことから始めた。 超長鎖、長鎖、中鎖、短鎖ポリリン酸を一定の濃度まで培地で段階的に希釈し、歯周病菌の一種であるStreptococcus gordonii(S. gordonii)を接種、培養し、細菌の発育の有無を確認したところ(微量液体希釈法)、長鎖ポリリン酸が最も抑制した。さらに長鎖ポリリン酸のうち平均鎖長130と平均鎖長100では、平均鎖長100の方がより抑制した。この平均鎖長100の長鎖ポリリン酸を用いて菌の発育を阻止する最小濃度を確認したところ0.2w/w%であった。この平均鎖長100の長鎖ポリリン酸0.2w/w%(0.2%lp(100)と呼称す)は、トルイジンブルーの染色状態と元素分析結果からハイドロキシアパタイト(HA)にコートすることが可能であった。作製した0.2%lp(100)HAにS. gordoniiを接種したところ、多くの細菌の形態破壊が走査型顕微鏡観察より認められた。また、蛍光分析から細菌の生存率が対照よりも低かったことが分かった。このことから、0.2%lp(100)HAはS. gordoniiに対し抗菌効果があることが分かった。 一方、上皮細胞を用いたwound healing assay(創傷治癒評価)を0.2%lp(100)に調整した培地で行ったところ、24時間後、創の閉鎖は見られず細胞の剥離が認められた。しかしながら、0.2%lp(100)を30秒間暴露させ通常培地で培養したところ創の閉鎖が認められた。 以上のことから、0.2%lp(100)HAはS. gordoniiに対し抗菌性を有していることが分かった。引続き、上皮細胞に対する親和性をlp(100)HA上に播種し培養するだけでなく、3次元培養しlp(100)HAとの相関を確認している。
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