研究課題/領域番号 |
15K11213
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片桐 渉 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10437030)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨再生 / iPS細胞 / 増殖因子 / 培養上清 / 液性因子 |
研究実績の概要 |
平成27年度はまず、われわれがこれまでに行ってきた骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の培養上清を由来とする液性パラクライン因子(以下MSC-CM)による骨再生についてin vitroおよびin vivoの両面からその細胞増能や血管新生、骨分化誘導に影響のある遺伝子発現などの基礎データを整理しこれをコントロールとした。MSC-CM中にはインスリン様増殖因子(IGF)-1、トランスフォーミング成長因子(TGF)-beta1、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの増殖因子が含まれていた。MSC-CM存在下の培養したヒトMSCにおいてはアルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、Runx2などの骨形成関連遺伝子、VEGFやアンジオポエチン1、2など血管新生関連遺伝子の発現の亢進を認めた。in vivoにおいてはラット頭蓋骨骨欠損モデルなど動物モデルを作成し、アテロコラーゲンを基材とし移植実験を行った。結果、移植後2週において良好な骨再生を認めた。 次いで、市販されているヒト線維芽細胞由来iPS細胞株を利用し、細胞培養および培養上清の回収を行い、iPS細胞由来液性因子(iPS-CM)を作成した。 iPS-CM中のサイトカインについて、サイトカインアレイあるいはELISA法により主としてこれまでにMSC-CMにその含有を確認された増殖因子について検討を行った。その結果iPS-CMには少なくともMSC-CMにおいてわれわれが検索したIGF-1、TGF-beta1、VEGFが同程度の濃度含有されていることがわかった。またiPS-CM存在下で培養したヒトMSCにおける骨関連遺伝子および血管新生関連遺伝子の亢進も認めた。これらのことより、in vitroにおいてはiPS-CMはMSC-CM同様の作用を示す可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iPS細胞の使用において、当初は口腔組織よりiPS細胞を樹立し研究を開始することを当初の目標としていたが、その前段階として市販の細胞を用いた検討を先行させた。これはiPS細胞の樹立手技が当初確立されていない環境であったため、preliminaryな研究でまず市販細胞を用いその効果を探索することを先行させたためである。
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今後の研究の推進方策 |
われわれの施設におけるiPS細胞樹立手技は現在確立されつつある。したがって次年度以降は速やかに着手が可能と考えられ、これまでの前駆実験の結果を踏まえ、研究を遂行する。
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