研究実績の概要 |
平成29年度の本研究では、昨年度同様、microRNA発現調整によるMSC分化に対する影響を検討することによって、MSCの歯周組織構成細胞への分化に対しての重要なmicro RNAおよび刺激因子を同定するという観点から研究を推進した。 1. Micro RNA発現調整細胞の未分化維持および分化の方向付けの検討: IGF-1, PDGF-AAの刺激によって、Osteoblast(HOB), Cementoblasts(CEM)への分化が促進された。MSC未分化マーカーに関しては、IGF-1によってSOX11およびETV1発現が抑制された一方、PDGF-AAによってFOXP1発現は顕著に抑制された。さらに、IGF-1によってmiR-383の顕著な発現亢進が認められたが、miR-628発現は抑制された一方、PDGF-AAによってmiR-210発現が顕著に亢進された。 また、miR-383をMSCに対して過剰発現させ、細胞分化に対する影響を評価した。CEM分化には促進的に働いたが、骨分化に対しては、Osterix発現が抑制された。さらに、HPL cellsへの分化に対しては抑制的に働いた。MSC未分化維持に関しては、GATA6の発現を抑制した一方で、ETV1発現を顕著に促進した。 2.Micro RNA発現プロファイルの分類:未分化状態維持に関与する遺伝子発現の観点から、FGF2: GATA6, SIM2;BMP2: SOX11,ETV5, IGF-1: SOX11; PDGF-AA: SIM2, FOXP1; TGF-β1:GATA6, ETV1; TGF-β3:SIM2, ETV1の発現調整に有効であると分類でき、歯周組織構成細胞への分化に必要なmicro RNA発現という観点から、HPL cells: BDNF, Noggin以外;HGF: IGF-1, TGFβ3; HOB: BDNF, Noggin; CEM: PDGF-AA, BDNFが有効であるという分類が可能となった。 期間内の研究において、MSCの未分化維持および歯周組織構成細胞への分化促進という観点から、各々に特徴的なmicro RNAおよび有効な発現調整因子の候補が示唆された。さらに、同定されたmicro RNAおよび標的遺伝子に対する影響を検討することで、詳細な歯周組織構成細胞への分化メカニズムが明らかになると考える。
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