研究実績の概要 |
本研究ではヒトiPS細胞を用いた組織再生メカニズムを免疫組織学的手法と画像解析によって明らかにし、安全・確実な歯周組織iPS細胞再生療法を確立する事を目的としている。初年度の研究成果からフィーダーフリー・ゼノフリーiPS培養法から、歯周組織の発生学的起源である神経堤細胞への誘導も実現していた。2016年度は初年度の研究成果を踏まえ、①組織再生メカニズムを検証する前提として、申請者らがiPS細胞から誘導した神経堤細胞が、組織再生を目的とする歯周組織に存在しているのかを確認・検証を行った。発生学的な観点から歯周組織構築の起源を確認した。神経堤の細胞系譜を追跡できる遺伝子改変マウス(P0Cre/floxed-EGFP)を用いた実験により間葉系幹細胞マーカーであるCD44,CD140a(PDGFRα)などが歯根膜に存在し、それらの細胞の一部はGFPとの共在により神経堤に由来することが示唆された。これは間葉系幹細胞の一部が神経堤に由来するというMorikawa et al., BBRC, 2009にもつながる結果となった。そのため、神経堤由来間葉系幹細胞は歯周組織再構築への有用な細胞源である可能性が示唆された。②そこでヒトiPS細胞から神経堤様細胞を介することで、LNGFR(+)THY-1(+)細胞を誘導作製した(Ouchi et al., Differentiation, 2016)。LNGFR(+)THY-1(+)細胞は過去の報告から有効なヒト間葉系幹細胞マーカーとして報告されている(Mabuchi et al., Stem Cell Reports, 2013)。ヒトiPS細胞由来LNGFR(+)THY-1(+)細胞は組織由来のそれに比較し、より効率良く分離できた。
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