研究課題/領域番号 |
15K11222
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
柴田 陽 昭和大学, 歯学部, 講師 (30327936)
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研究分担者 |
鈴木 大 昭和大学, 歯学部, 助教 (00585797)
宮崎 隆 昭和大学, 歯学部, 教授 (40175617)
谷本 安浩 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (40312045)
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
山田 篤 昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チタン / チタン‐ジルコニウム合金 / インプラント / 適応的リモデリング |
研究実績の概要 |
放電陽極酸化によりチタンおよびチタン‐ジルコニウム合金表面に非結晶質のアナターゼ型二酸化チタンを析出させ、その表面微細構造と化学構造を同定した。共焦点レーザー顕微鏡と原子間力顕微鏡による表面構造解析では、放電陽極酸化チタン表面では放電痕によりマイクロスケールからナノスケールの超微小形状見られた。またX線光電子分光分析から、水酸化ラジカルとその反応生成物である親水性官能基が見られた。親水性官能基と表面微細構造により、骨芽細胞の石灰化能が著しく向上する。またラジカルの酸化作用によって、マトリクスの架橋構造が亢進し、石灰化組織の物理的特性が高くなることが明らかとなった。石灰化組織の物性はラジカル発生のみを阻害した陽極酸化チタン表面で著しく低下する。一方、*骨誘導タンパクであるBMP2の添加により、カルチャープレート上で培養した骨芽細胞の石灰化マーカー遺伝子は著しく上昇する反面、ラジカルと同様に酸化作用を有するLysyl oxidaseの発現定価により石灰化組織の物性は低下した。天然硬組織は階層構造によるサイズ依存性で物理特性が変化する。このため、均一な人工材料との直接比較は構造を無視できる微小領域での評価が本来的に正しい。ナノインデンテーション法は、先端形状をナノスケールで校正したダイアモンド圧子と試料表面の接触による荷重(弾‐塑性変形)‐除荷曲線(弾性変形)から微小領域の材料特性を考察する技術である。一方で、生体組織は粘弾性材料であり、荷重応力に対するひずみの遅延(時間依存)を無視した従来法をそのまま適用することには問題がある。この点、圧子先端の正弦波振動による連続測定は、粘弾性によるエラー補正とひずみ速度に依存じた生体組織の特性変化を同時に議論できる有効な理論体系である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、in vitroで細胞培養した試料上に析出する石灰化物の物理化学的あるいは質的評価を顕微ラマン分光およびAFMナノインデンターにより検証することができた。高分解能のラマン分光法により、サンプル表面の石灰化物から検出したアミド結合に帰属するピークを微分することにより、有機成分であるコラーゲン分子の架橋結合を定量化する。またナノインデンテーション法では、準静的試験および動的試験を用いることにより、貯蔵弾性係数と粘弾性の測定が可能である。このため再生石灰化組織に求められる剛性と耐久性評価ができるようになった。またチタン‐ジルコニウム合金の放電陽極酸化処理パラメーター設定を行うことが可能になり、論文発表をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
老化に伴う顎骨の形態的変化に対応したインプラントの開発が急務である。加齢に伴う狭小化により顎骨の支持機能は低下し、インプラントの埋入スペースが制限される。純チタン製インプラントは物理的な強度が不足しており、欧米諸国では直径の小さいチタン‐ジルコニウム合金インプラントに用いることが主流になりつつある。チタン‐ジルコニウム合金はその強度と同様に弾性係数が純チタンに比べて高く、表面微細構造の最適化によって応力遮断効果を積極的に抑制することが力学的生体適合性に重要と考えられる、この点、基課題で用いた放電陽極酸化処理は、再生骨組織とチタン‐ジルコニウム合金の接触面積増大から優れた界面バイオメカニクスが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していたよりも研究成果が順調に得られ、国際的に権威のある学会発表を行った。また、生体材料周囲に生じる再生組織の質的評価は国際的には競争が激しく、速報性が求められるため、予定よりも多くの論文発表が必要になった。成果発表に重点が置かれたことから、消耗品金額は予定よりも少なくなった。次年度の消耗品金額はしたがって計画よりも大きくなると考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は動物実験に移行し、長期経過を追及することから飼育費が発生する。さらに組織切片を作成するため必要な試薬、器具などこれら実験がルーティンに稼動した場合の最低限必要な予算を算出した。また本実験から得られるデータは学術的にも価値の非常に高いものとなることが予測されるため、国際学会発表や国際学術誌などの投稿が必要であると考えられる。
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