研究課題/領域番号 |
15K11224
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
岩田 隆紀 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (60431946)
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研究分担者 |
鷲尾 薫 東京女子医科大学, 医学部, 特任講師 (50514486)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 剛性 / 間葉系幹細胞 / 分化制御 / 再生医療 / 細胞移植 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞は成人にも存在する体性幹細胞であり、様々な疾患において臨床研究が進められている。In vitroにおいて適切な培養条件で培養することで骨・軟骨・脂肪へと分化することが間葉系幹細胞を定義する上で必要条件であり、骨や軟骨の再生では細胞ソースとして用いられてきたが、近年は免疫調節機能や抗炎症作用など様々な機能を持ち合わせていることが明らかとなり、難治性の免疫疾患や炎症疾患においても間葉系幹細胞投与の安全性・有効性が蓄積されつつある。しかしながら、決定的なマーカーが存在しないことと、その性質や分化制御に関しては不明な点が多いことも知られている。 そこで本研究では歯根膜由来間葉系幹細胞の培養基材の硬さによる分化制御が可能であるかを検討している。具体的には表面剛性(硬さ)の異なる培養表面で分化能(骨分化と靭帯分化)を定量化した。具体的にはSoftwell-96 well glass bottom plate-Collagen-High Throughput Screenを用いて骨芽細胞分化に関してはオステオカルシン、オステオポンチンの遺伝子発現の経時的変化を各stiffnessにおいて定量的PCRにより相対評価し、50kPaもしくはゲルコート無しが最適であることを確認した。また靭帯細胞分化に関してはSCX、TNMDの遺伝子発現を指標に様々な硬さの培養表面を探索したところ、全ての硬さにおいてその発現の変化が見受けられなかった。また表面硬さによる遺伝子発現の変化をクラスタリングしたところ、細胞骨格関連遺伝子の発現変化が観察された。表面硬さにより細胞が形態を自発的に変化させ、環境に即した構造変化を起こしたことが推測されており、今後は関連する受容体やリガンドなどに着目し、シグナル伝達経路を解明すると共に、さらにそれらが細胞分化の制御に関与するかを検索していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は骨芽細胞ならびに靭帯細胞誘導培地を用いて、最適な試薬濃度・誘導期間を探索することであったが、骨芽細胞分化における最適条件は決定したものの、培養表面硬さによる靭帯細胞分化制御に関する遺伝子発現の変化(SCX、TNMD)は観察されなかったことから、次世代シーケンサーのデータから異なるマーカー遺伝子等の解析を進めている。 また、最終的には安価かつ簡便な技法で培養表面の硬さを制御するために、イソプロピルアクリルアミドなどの実績のある高分子を用いて大量生産可能な培養表面硬さの制御を実施したいと考えている。そこで本ポリマーを用いて膜厚と濃度を最適化し、細胞が接着しやすい条件を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
骨分化においては想定通りの結果が得られているものの、靭帯分化に関しては培養表面硬さによる制御のみでは関連遺伝子の発現が見られなかったことから、来年度においては靭帯分化を誘導するサイトカインの導入ならびにメカニカルストレスを細胞に加えることによりSCX、TNMDの発現に変化が起こるかを解析していく。また平成27年度実施した次世代シークエンサーを用いたクラスタリングを解析したところ、主に細胞骨格関連遺伝子の発現に変化が見られた。今後これらの遺伝子をsiRNA等を用いて発現を調節することによる細胞分化の制御が可能であるかを確認していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の残額では実験に必要な分子生物学関連試薬の購入が困難であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
靭帯関連遺伝子特異的なプライマーの購入費用に充てようと考えております。
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