研究課題
ヒト間葉系幹細胞の様々な機能により、既存治療では治すことのできないアンメットメディカルニーズに対する臨床応用は進んでいる一方、そのメカニズムに関しては未知の部分が大きい。臨床応用するにあたって、どのような間葉系幹細胞をどのように処理して移植するかに関しても疾患ごとに千差万別であり、治療効果を担保する有効性評価指標の探索が進められている。私共の研究所では硬組織誘導試薬(アスコルビン酸、ベータグリセロリン酸、デキサメサゾン)を加えた培地で歯根膜由来間葉系幹細胞シートを培養・移植することで有意な歯周組織の再生が引き起こされることを確認している。一方では間葉系幹細胞を培養する際に基材の硬さを変えることで分化制御ができることも明らかとなってきた。そこで本研究ではヒト歯根膜由来間葉系幹細胞を特にstiffnessによって分化制御する方法を開発し、再生治療製品の開発を念頭に、靭帯と骨を再生するための最適な間葉系幹細胞の分化制御方法の確立を目指す目的で以下の実験を実施した。①市販の硬さ0.2,0.5,1,2,4,8,12,25,50kPaの硬さを示すマルチウェルディッシュにて歯根膜由来間葉系幹細胞を培養し、その接着増殖能を検索したところ、0.2~8kPaの比較的柔らかい基材上においてはその接着増殖能が有意に低下した。②上記①の条件において硬組織誘導試薬の添加によるALP活性を測定したところ、通常硬さのディッシュと比較して4,8kPa以外の硬さにおいてALP活性が優位に低下した。③4,8kPaならびに通常硬さのプラスチックディッシュにおいて歯根膜由来間葉系幹細胞を培養し、トータルRNAを回収し、次世代シークエンサーにてその遺伝子発現を解析したところ、20%程度の遺伝子発現に変化があった。以上より、歯根膜由来間葉系幹細胞の骨分化・歯根膜分化における最適培養基材硬さが明らかとなった。
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