研究課題/領域番号 |
15K11227
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
松野 智宣 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (80199827)
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研究分担者 |
浅野 一成 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (10632531)
橋本 典也 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (20228430)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チタン / バイオロジカルエイジング / 電解還元性イオン水 / 接触角 / 親水性 / 細胞毒性 |
研究実績の概要 |
酸化チタン表面には経時的な劣化(バイオロジカルエイジング)が生じる。そのため、骨―インプラント接触率(BIC)が低下し、オッセオインテグレーションの妨げとなっている。そこで、近年、紫外線照射による光機能化などによってエイジングしたチタン表面をリフレッシュさせるなどの対応がなされている。このような背景から、本研究ではより安全、かつ簡便にバイオロジカルエイジングを制御し、細胞接着などの生体活性を高めるelectrolyzed ion-water(電解還元性イオン水: S-100®)による新規表面処理法の確立を目指す。 まず、27年度は強アルカリであるS-100に6-4チタンディスクを1日浸漬させ、表面の微細構造変化を表面粗さ計とSEMで観察した。その結果、S-100処理によるチタン表面の微細構造に変化がないことが確認された。次に、S-100の高い洗浄力による超親水性の獲得について検討した。未加工の6-4チタンディスクとサンドブラスト処理したものとを1,7,28日間エイジングさせ、100%濃度のS-100を用いて表面処理した。その結果、S-100処理したチタン表面の接触角は非処理に比べ両群とも有意に低値を示した。さらに、10%, 20%濃度のS-100を添加して細胞増殖試験を行ってところ、生理食塩水に比べて増殖能に有意さは認められなかった。 以上より、S-100は安全にチタンのバイオロジカルエイジングを改善できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度は当初、チタンエイジング後にS-100に浸漬するリフレッシュ処理と加工直後にS-100処理を行い、エイジングを防止するプロテクト効果の両方を接触角などで確認する予定であった。しかし、後者の検討が進んでいないため(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は前述したプロテクト効果の検討が行われていなかったことから、まずそれを検証する。さらに、S-100処理後のチタン表面の生体機構化の獲得をフィブロネクチンやアルブミンなどを用いてタンパク質吸着を蛍光免疫染色で確認する。その後、in vivo研究として、6-4チタンスクリューを動物の骨内に埋入して、オステオインテグレーションに対する効果を検討していく予定である。しかし、当初は犬を用いて市販のデンタルインプラントで検討する予定であったが、n数や動物愛護の観点からウサギ顎骨にミニスクリューを埋入することも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費としてのチタンディスクが当初予定した数よりも少量であったこと、旅費として予定していた海外発表を延期したことが考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は新たにチタンデイスクを大量購入すること、蛍光免疫試薬などを購入すること、さらに動物実験に伴う動物代、飼育費や手術器材等が必要となることから前年度分を補填する予定である。
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