研究課題/領域番号 |
15K11228
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀明 東京都市大学, 工学部, 准教授 (00196263)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯科理工学 / 歯科補綴装置 / 純チタン / 乾式研磨加工 / 研磨液含浸型軸付き砥石の開発 / ポリエチレングリコ-ル / 表面粗さ / 光沢面 |
研究実績の概要 |
純チタンは,歯科補綴装置用金属材料としては大変優れているが,難削材であるため,その使用が敬遠されがちとなっている.本研究の目的は,生体に安全な歯科用純チタンを研磨するための,研磨特性に優れ,かつ研磨液を不要とするビトリファイドボンド研磨液含浸型軸付き砥石を開発することである.これまで,研究代表者は,歯科技工用ポリ尿素樹脂ボンド軸付き砥石を開発し,純チタンおよびTi-Ag合金の湿式精密研磨加工について報告してきた.しかし,純チタンの熱伝導率は大変小さく,研磨液を供給しない乾式研磨加工は,大変難しいと考えられてきた.そこで,本研究においては,砥石の結合剤に,耐摩耗性および耐熱性に優れ,気孔を有し,砥粒の保持力に優れたビトリファイド結合剤を使用し,この砥石に,ポリエチレングリコ-ル(PEG)を含浸させ,乾式研磨における潤滑作用と冷却作用を自己発現する,ビトリファイドボンド研磨液含浸型軸付き砥石を開発した.この砥石の研磨特性に関して検討を行った.平成27年度は,砥粒にはGC(SiC)砥粒(#8000,平均1.2μm)を使用した.砥粒率は9.2vol%,気孔率は40,50,60および70%とした.PEGの分子量は6000,PEGの含浸回数は,2および5回とした.初期粗さは,算術平均粗さRa=1.0μmとし,研磨実験を行った.多くの実験回数による結果ではないが,気孔率が大きい場合には,PEGの含浸回数に関係なく,研磨後の算術平均粗さRaが,ほぼ0.2μmを示した.一部の条件ではあるが,歯科補綴装置の表面粗さの目標値にほぼ達することができた.平成28年度は,PEGの最適な含浸方法を構築するための検討を行った.メゾテクダイヤにおいて,PEGの含浸を行い,含浸後の時間経過と研磨特性の関係について検討した.さらに,研究室においてPEGの含浸を行い,最適な含浸方法を構築するための検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.本研究において使用した,ビトリファイドボンド研磨液含浸型軸付き砥石は,共同研究先であるメゾテクダイヤ株式会社に製作を依頼している.特注品であるため,特殊なビトリファイドの結合剤を使用しており,砥石の焼成が大変難しく,製作に時間を要した.このため,軸付き砥石の納期が遅れてしまい,実験遂行に遅れが出てしまった.2.メゾテクダイヤにおけるPEGを砥石に含浸させる工程において,PEGを脱イオン水に溶解させて,PEGの水溶液を作成していたが,一時期,表面粗さが大きくなってしまい,研磨実験がうまくいかなくなってしまった.この原因を調べるために,砥石の製作過程について調査をした結果,脱イオン水の代わりに水道水を使用して,PEGの水溶液を作成していたことがわかった.水道水の代わりに,脱イオン水に再び戻し,PEGを砥石に含浸したところ,以前と同様な研磨結果が得られた.これより,PEGの水溶液の作成に,水道水を使用すると,実験がうまくいかないことが明らかになった.この原因を調べるために,時間を要したため,実験遂行に遅れが出てしまった.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,本研究においては,臨床応用を目的とした歯科技工用軸付き砥石開発に関する新しい試みとして,ビトリファイドボンド研磨液含浸型軸付き砥石を開発し,純チタンを研磨し,研磨特性の検討を行っていく. 平成28年度は,PEG(ポリエチレングリコ-ル)の最適な含浸方法を構築するための検討を行った.メゾテクダイヤにおいて,砥石にPEGの含浸を行い,含浸後の時間経過と研磨特性の関係について検討したところ,含浸後90日程度までは研磨能力は低下しないことがわかった.さらに,研究室において,砥石にPEGの含浸を行い,ツルーイング後に研磨実験を行ったが,ツル-イングを2回行っても研磨をすることができた. このため,平成29年度は,引き続き,PEGの最適な含浸方法を構築するための方法について研究すると共に,PEGの分子量を変化させ,PEGの分子量が,研磨結果に及ぼす影響についても研磨実験を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
軸付き砥石は,メゾテクダイヤ株式会社より購入しているが,安価に購入することができた.また,研究を進めていく中で,メゾテクダイヤ株式会社より,軸付き砥石の一部を寄付して頂いたので,研究費が節約できた.繰越金28,431円が発生し,これを次年度の物品費に使用する.
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次年度使用額の使用計画 |
1.物品費としては,純チタン2種の板材,実験装置を製作および改良するための材料,機械部品の購入,軸付き砥石の購入に使用する計画である. 2.旅費としては,学会発表のための旅費に使用する計画である.
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