研究課題/領域番号 |
15K11229
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
大島 朋子 鶴見大学, 歯学部, 学内教授 (50233101)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ殺菌 / 大気圧低温プラズマ / 殺菌活性 / ラジカル種 / 口腔病原微生物 |
研究実績の概要 |
本研究では、大気圧低温プラズマによる再生移植組織および宿主受容組織を無菌化できる技術開発のための基礎研究を目的とし、非侵襲的に短時間で組織を無菌化する新たな治療技術となり得るかを評価する。大気圧プラズマによって産生される活性種を液相中に一定濃度保ち十分な殺菌活性があること、かつ短時間に残留活性が消失することを評価し、ヒト前臨床試験までの有用性・安全性を評価する。本年度は以下の項目を検討した。 (1)大気圧低温プラズマ処理水の作成、および各種微生物に対する殺菌活性の測定:①プラズマ処理水の作成パラメーターの検討と殺菌反応パラメーターを詳細に検討した。②感染の可能性のある菌種のMIC,MBC測定を、う蝕原因菌 Streptococcus mutans、難治性感染根管関連菌 Enterococcus faecalis、口腔カンジダ症原因真菌 Candida albicansで行った。 (2)殺菌作用メカニズムの解明(活性種の同定)およびそれに基づく殺菌条件の決定:先行研究によりプラズマ照射により様々なラジカルが産生されることが示されおり、その活性種が直接・間接作用として殺菌効果があることも知られている。実際に産生されるラジカル種を測定した。A.あらかじめ純水をプラズマ処理し、一定濃度以上安定に存在する活性種を測定した。電子スピン共鳴法(ESR)で測定したところ、酸素ラジカルの存在が確認された。B. Aで判明した結果から酸素ラジカルの最適な殺菌条件について、詳細に検討した。 ①反応pHと保存pH:殺菌反応pHは4.8以下で劇的に活性が高くなり、保存pHは処理水そのままの2.5以下が適していた。②反応温度と保存温度:殺菌反応は室温~37℃が適しているが、保存は凍結が必須であった。③反応時間と保存時間:反応時間は10秒で十分であり、保存時間は温度依存性に低温である程長期安定であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた(1)大気圧低温プラズマ処理水の作成、および各種微生物に対する殺菌活性の測定、と(2)殺菌作用メカニズムの解明(活性種の同定)およびそれに基づく殺菌条件の決定、について実行できたので、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、移植片受容組織の感染モデルにおける殺菌評価試験、iPS培養細胞(単層細胞および移植シート)での安全性試験、移植組織での安全性試験の実施を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表する段階にはいたらなかったため、旅費の使用がなかったこと、分析委託は連携研究者の支援の元に行ったため費用が発生せず、それに関連した謝金も発生しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞や組織培養のための試薬、培地の価格が上昇しているので、差額に充当する予定である。また、蛍光試薬など特殊試薬の高感度グレードの使用や、測定・観察機器の機能拡充のためのユニット増設をすることで、実験データの信頼性を上げるために使用する予定である。
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