本研究では、大気圧低温プラズマによる再生移植組織および宿主受容組織を無菌化できる技術開発のための基礎研究として、非侵襲的に短時間で組織を無菌化する新たな治療技術となり得るかを評価することを目的としている。そのために大気圧プラズマによって産生される活性種を液相中に一定濃度保ち十分な殺菌活性を示すこと、かつ短時間に活性が消失し残留活性を示さないことを検証し、ヒト前臨床試験までの有用性・安全性を評価をするものである。前年度までの結果から、大気圧低温プラズマ処理水の作成方法の確立および各種微生物に対する殺菌活性が示され、殺菌作用メカニズムの解明(活性種の同定)およびそれに基づく殺菌条件を決定し、移植片受容組織の感染モデルにおける殺菌評価試験から、軟組織モデルであるラット根管感染モデルとでの高い殺菌効果と、硬組織モデルとしてヒドロキシアパタイトディスクおよびデンディンペレットを使用した感染歯質モデル(Streptococcus mutans感染モデル)と、ヒト抜去歯のE. faecalisとCandida albicansおよCandida glabrata感染根管モデルを作成し、プラズマ照射またはプラズマ処理水での殺菌試験を行い、すべての系で検出限界以下に到達する高い殺菌効果が認められたが、プラズマ処理水の方がより短時間で高い効果を示した。そこで、移植片受容組織および移植細胞(単層細胞および移植シート)でのプラズマ処理水の安全性試験を行った。その結果、細胞および組織に対し、代謝活性の障害は認められず、高い安全性を有していることが示された。したがって、大気圧低温プラズマによる処理水は高い殺菌活性と生体組織安全性を併せ持つと結論された。
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