研究課題
本研究では、実施者がこれまでに開発したナノカプセルを基に、ナノカプセルの内部にMRI造影活性を有する金属を導入した新規MRイメージング剤を作成し、その機能を評価することで、ナノカプセルの特徴を利用した高感度なMRイメージング剤の開発を目的としている。最初に、ナノカプセルの合成を行った。まず、ナノカプセルのアミノ基をブロモ酢酸エチルによりアルキル化したのち加水分解することで、トリカルボキシ基を導入したナノカプセルを新たに合成した。次いで、塩化ガドリニウムと配位子交換することで、ガドリニウム内包ナノカプセルの合成に成功した。得られたナノカプセルの構造は、各種NMR測定、質量分析より明らかにした。得られたガドリニウム内包カプセルを評価するために、カプセルの半球構造となるアミン配位子を合成した。次いで、塩化ガドリニウムと配位子交換することで対応する単核ガドリニウム錯体と、使用する塩基を変えることで複核ガドリニウム錯体の合成に成功した。得られた、錯体はそれぞれ各種NMR測定、質量分析、元素分析、さらに複核錯体においては、単結晶X線結晶構造解析により詳細な立体構造を決定した。得られた錯体の安定性を錯体の安定度定数によりそれぞれ評価したところ、ガドリニウム単核錯体に比べ、ガドリニウム内包ナノカプセルの方が同じ配位数にも関わらず、錯体の安定度定数が10倍以上向上することが明らかとなった。次いで、1H NMRにより各錯体の緩和速度を評価したところ、広く医療現場で使用されているGd-DTPAよりも単核錯体および内包カプセルともに緩和度が高くなることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画は、MRI造影活性を有する金属内包ナノカプセルの合成および緩和効果の検討であった。当該年度は、MRI造影活性を有するガドリニウム内包ナノカプセルの合成に成功し、その緩和効果について、比較モデルとなる錯体を用いて評価するところまで、研究が進むことができたので、おおむね順調に進んでいると考えている。
ナノカプセルによるガドリニウムイオンの内包効果をより詳細に検討する。特に、血液中でMRI造影の妨げとなる各種イオン、または血中の糖成分などと、水分子の配位速度の違いを分析し、ナノカプセルによる内包効果の利点を明らかにする。フッ素化ナノカプセルにキレート配位子を導入し、ガドリニウム内包フッ素化ナノカプセルの合成及び構造決定を行う。ガドリニウムによる1H核の緩和効果および19F核の直接測定によるデュアルイメージングについて検討する。
諸事情により計上していた旅費を使用しなかったため。
物品費および英文校正費に使用させて頂く予定です。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Polyhedron
巻: 107 ページ: 148-152
doi:10.1016/j.poly.2015.12.064