本研究では、実施者がこれまでに開発したヘミクリプトファンと呼ばれるナノカプセルを基に、ナノカプセルの空孔内部にMRI造影活性を有する金属を導入した金属内包ナノカプセルの作成およびその機能評価により、ナノカプセルの空孔を利用した新たなMRイメージング剤の開発を目的としている。 本年度は、ナノカプセルを生理条件下で使用することを指向して、ポリエチレングリコール鎖をカプセルのスペーサー部位に導入することで空孔内部を拡張したナノカプセルの合成を行った。カプセルの合成はジベンゾ-24-クラウン 8-エーテルの一方の芳香族にアルデヒド基導入した一置換クラウンエーテルを出発原料とした。まず、強酸性条件下ホルムアルデヒドと反応させることで、環化三量体を得た。ついでトリス(2-アミノエチル)アミンとイミノ化した後、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより、トリエチレングリコールを6本有する空孔サイズの大きなナノカプセルを合成した。得られたナノカプセルはNMRより、2種類の回転異性体が存在することが明らかとなった。さらに、得られた新規ナノカプセルは空孔内部に亜鉛イオンが配位することを見出した。 トレン配位子からガドリニウムを内包させるためのキレート型の配位子を合成する手法は既に見出しており、今後このポリエチレングリコール鎖を有する新規ガドリニウム内包ナノカプセルを合成し、造影能を制御できるMRイメージング剤への応用が期待される。
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