新規の分子標的薬の開発は目覚ましく、わが国においても2012年から口腔癌に対するepidermal growth factor receptor (EGFR)を標的とした抗体が承認されると、短期間で広く普及するようになっている。これまでの使用で分かったことは、EGFR抗体単剤での効果は限定的であり、放射線、他の抗癌剤との併用が必要なことである。今後の分子標的薬では、他薬剤との併用を念頭においた研究が求められる。 生体における細胞死の中には、ネクローシス、アポトーシスに加えてオートファジーを介した細胞死が存在する。safingolはcaspase非依存的にアポトーシスを誘導するが、オートファジーに関しては十分に研究されていない。前年度までにsafingolによるオートファジーの誘導ならびにsafingolによるオートファジー阻害剤(3-MA、bafilomycin)併用にてsafingolによる細胞生存率はさらに低下することを確認した。本年度はさらにsafingolと3-MAの併用にてendoGのミトコンドリアから核への移行がみられた。caspase阻害剤ではsafingolと3-MAによる生細胞数減少に対する明らかな影響はみられなかった。一方、ROSの抗酸化物質であるNACはsafingolと3-MA併用による細胞傷害性を強く阻害した。 以上より、safingolは口腔SCC細胞において、アポトーシスとオートファジーを誘導すること、オートファジーは細胞の生存に働いており、その阻害がsafingolによるendoGを介するアポトーシスの増強につながることが示唆された。
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