研究課題/領域番号 |
15K11249
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中川 貴之 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (30456230)
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研究分担者 |
武知 正晃 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 准教授 (00304535)
太田 耕司 広島大学, 病院(歯), 助教 (20335681)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨代謝阻害薬関連顎骨壊死 |
研究実績の概要 |
ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体であるデノスマブは,ビスフォスフォネート(BP)注射剤と同頻度に顎骨壊死を誘発し,破骨細胞の生存・分化におけるRANKLシグナル経路の障害が顎骨壊死に関与していると示唆される.これまでわれわれはゾレドロン酸に影響を受けるRANKLシグナル分子の同定のため,マイクロアレイを用いた網羅的な解析を行い,Nfatc1とCar2の2遺伝子がゾレドロン酸の破骨細胞分化阻害に伴い,発現が低下することを明らかにした.さらにマイクロアレイの結果を詳細に検討し,VEGFR2がRANKLによる破骨細胞分化に関与する可能性を見出した.本研究ではVEGF-VEGFRシグナルとRANKL誘導破骨細胞分化との関連について研究を行い,骨代謝阻害薬関連顎骨壊死の病態を解明することを目的をして研究を進めている.平成28年度はデノスマブがヒト由来の破骨細胞にしか奏功しないため,健常人より採取した末梢血から破骨前駆細胞多く含むと考えられるCD11b陽性細胞を抽出し,破骨細胞へと分化誘導を行う実験系を確立した.またマイクロアレイの結果から得られた22遺伝子のうちmRNA発現解析においてBPによる発現制御を受けると考えられた,VEGFR2,VEGFC,JDP2,RNF183についてwestern blottingタンパクレベルでの発現解析を複数回施行したが,VEGFR2遺伝子以外はいずれもタンパク発現の検討においてBP処理とは無関係の挙動を示し,候補から除外した.結果VEGFR2のみを候補遺伝子として現在解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの課題としてDensity gradient法に加えMagnetic cell sorting法でヒト破骨細胞の細胞表面マーカーを考えられているCD11b陽性細胞を抽出し,破骨細胞へ分化誘導させる実験系で効率よく破骨細胞へと分化させるためにはやはり高密度での培養が必須であること(健常人男性40mlの採血から96wellプレートおよそ1~2枚分)が明らかとなった.またTRAP assayにおいてゾレドロン酸およびデノスマブともに濃度依存的に破骨細胞分化の抑制効果が表れた.研究試料の採取が健常人男性の末梢血であるため一度に大量の採取が困難であること,また前駆細胞が成熟破骨細胞へ分化するまでの時間に5~7日を要するため,研究遂行に時間を要する結果となっている.現在はVEGFR2のmRNAの発現に対し,ゾレドロン酸による発現抑制がみられることは確認されたが,デノスマブが同様に発現抑制に関与するか否かは,デノスマブ投与による培養上清中のRANKLの測定をELISA法などによって検討する必要がある可能性があり,進捗状況としてはさらに遅延する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
TRAP assayでは形態学的に多核化した成熟破骨細胞形成の抑制効果が確認されているが,破骨細胞分化マーカーとしてのNFATc1遺伝子の発現をコントロールとして、ゾレドロン酸およびデノスマブ処理を行ったヒト破骨前駆細胞のVEGFR2タンパクの発現解析をwestern blotting法で行う予定としている.その後はVEGF-VEGFR2 シグナルの破骨細胞分化への影響を検討するため,VEGFR2 中和抗体,また siRNA を用いた VEGFR2 ノックダウンによる破骨細胞分化の形態学 的な検討を,また遺伝子学的検討としてはNFATc1以外のCAII,MMP9,Cathepsin Kなどの破骨細胞分化マーカーの発現を検討する.さらにベバシズマブやスニチニブ,ソラフェニブなどの血管新生阻害薬を投与し破骨細胞 の分化への検討を形態学的,遺伝子学的に検討する予定である.最終的には骨代謝阻害薬や血管新生阻害薬の投与予定患者からの投与前・後の末梢血単核球を用いた遺伝子発現と破骨細胞分化の検討を行い、臨床経過の追跡から,骨代謝関連遺伝子の中でMRONJ発症リスクと相関のあるものを抽出することが本研究の最終目標である.
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度より所属機関を異動となり、異動先の研究設備投資や、研究材料移送の費用を捻出するために一時的に年度末に向けて研究遂行を控えた結果、予定より少額で済んだため次年度使用額が生じた。これらの繰り越し金は移動先で当初の研究計画を遂行するため適正に使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画にある通り、主に消耗品や試薬への支払いへ使用する予定である。また研究最終年度であるため、その集大成として、口腔外科学会総会での発表を行うための旅費、および成果報告のための論文作成に必要な英文校正などに使用する予定としている。
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