研究実績の概要 |
われわれはこれまでヒト型抗RANKLモノクローナル抗体、デノスマブにより生じる顎骨壊死の発症率がBP注射剤と同頻度であることから,RANKLシグナル経路の阻害にBP製剤に関与していると考え,マウスの破骨前駆細胞にゾレドロン酸を投与し、発現変動がある遺伝子を調べてきた。その結果、破骨細胞の分化について重要な役割を担う転写因子NFATc1と骨基質の分解に必要な酵素Carbonic anhydraseⅡ(CAⅡ)がゾレドロン酸により発現が抑制され、破骨細胞の分化が阻害されている可能性を示した。本研究に用いたマイクロアレイ解析の結果を再検討し、ゾレドロン酸により発現に影響を受ける新規の遺伝子の同定を試みた.その結果,血管新生を誘導する上で最も重要な分子のひとつであるVEGFR2の有意な発現低下を認めた.このため骨代謝阻害薬関連顎骨壊死の発症に顎骨の血管新生阻害が関係していると考え、ヒト末梢血単核球由来のCD11b陽性細胞に着目し研究を継続した。CD11bは単球/マクロファージのマーカーであり、CD11b陽性細胞が破骨細胞に分化することが知られている。 実際に我々は健常人から採取した末梢血からCD11b陽性細胞(CD11b+)を抽出し、ゾレドロン酸を投与することにより破骨細胞形成は阻害され、破骨細胞分化マーカーであるNFATc1やVEGFR2の発現も低下していたことを示した。このため健常人の末梢血からDensity gradient法および吸着法で単核球を分離・培養し, M-CSFとRANKLで破骨細胞へ分化誘導しwestern blottingでのタンパク発現解析を行ったところ,ヒト破骨細胞でもマウス同様,ゾレドロン酸によりKDR/Flt-1/VEGFR2の有意な発現低下を認めた.
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