研究課題/領域番号 |
15K11251
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
虎谷 茂昭 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 准教授 (90172220)
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研究分担者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / CD133 / 口腔癌 / 無血清浮遊培養 |
研究実績の概要 |
CD133 は癌幹細胞の有力なマーカーとして考えられており、本研究では、ヒト口腔扁平上皮癌OSCC 細胞株由来 CD133 陽性細胞(CD133+)の機能解析について検討する予定である。 OSCC親株(KO、NA、UE)をマグネティックビーズ付抗CD133抗体で処理後autoMACS(ミルテニー)を用いてCD133+を分離した。CD133蛋白の発現を免疫組織学的に検討し、本分離方法によりCD133陽性細胞(CD133+)が再現性よく分離され、さらにCD133+の全細胞中に占める細胞数の比率はわずか約0.5%であることを明らかにした。無血清培養下、CD133+と CD133-間で浮遊培養系での浮遊細胞塊(sphere)形成能を比較した結果、CD133+は浮遊培養系で高いsphere 形成能を示したが、CD133-のみでは sphereをまったく形成しなかった。培養開始時に、CD133-に CD133+を加えることでsphere 形成能を獲得した。 sphere形成能をもつCD133+とsphere形成能を持たないCD133-を各々浮遊培養後、105の細胞をヌードマウス背部皮下に移植すると、CD133+を含むsphereは、腫瘍の形成を認めたが、CD133-のみでは腫瘍は形成できなかった。 また種々の細胞増殖因子のうち、EGF と SHH は親細胞株からの sphere形成能および sphere 内の CD133 発現を促進させた。また sphere 形成細胞は、少数の細胞でヌードマウス背部皮下移植において腫瘍を形成した。このことから、無血清浮遊培養系で CD133陽性細胞由来の sphere 形成能を有する細胞群は、癌幹細胞としての特性を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで研究はおおむね順調に遂行されている。しかしCD133陽性細胞が全細胞中に0.5%しか存在せずハーベストする労力は多大である。in vivono研究では細胞の供給、選別に大きな負担を感じている。 またEGFやSHHの添加による細胞間の影響の検討では、細胞の収集後のメカニズム解析が十分に行えないことがわかり、今後手法の改善に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、sphere形成能を有する細胞はがん幹細胞の特性をもつことが推測された。またsphere形成にはCD133+が必要であり、そのCD133+がCD133-と凝集することでsphere形成が開始する可能性が示唆された。このような機構にはCD133+が産生する液性因子・細胞増殖因子がパラクライン的に関与している可能性が考えられる。骨肉腫幹細胞ではTGF-β1の関与が(Zhang et al.2013)報告されている。そこで本研究ではCD133+が産生する液性因子がsphere形成能に及ぼす影響について明らかにする。CD133-が産生する液性因子がCD133+の生物学的特性に及ぼす影響についても明らかにする。またCD133+の遺伝子や蛋白発現についてDNAマイクロアレイ、プロテオーム解析により検討し、sphere形成能に及ぶすCD133+とCD133-の細胞間ネットワークを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、培養系での各種因子の相互関係をみる実験を行っているが、細胞内のパスウエイを検討中であるが、必要な薬剤などの検討段階であり、詳細が決まり次第購入予定である。また動物実験も保留中である。今後の研究のために必要な経費である。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子発現解析のためのマイクロチップ、蛋白定量のためのToF-MS,電気泳動試薬、実験動物の購入を予定している。
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