がん幹細胞は、がん治療における新たな標的細胞として注目されている。CD133 は癌幹細胞の有力なマーカーとして考えられている。今回、ヒト口腔扁平上皮癌OSCC 細胞株由来 CD133 陽性細胞(CD133+)の機能解析について検討した。 OSCC親株からCD133+を分離した。CD133+の全細胞中に占める細胞数の比率はわずか約0.5%であることを明らかにした。CD133+は通常の単層培養系ではCD133-や親細胞に比べ低い増殖能であった。また無血清培養下、CD133+と CD133-間で浮遊細胞塊(sphere)形成能を比較した結果、CD133+は高いsphere 形成能を示したが、CD133-のみでは sphereをまったく形成しなかった。しかしCD133-に CD133+を加えることでsphere 形成能を獲得した。興味あることに、sphere数および大きさがプラトーとなった時のsphere中のCD133+の占める割合は親細胞株と同等の0.5%であった。sphere形成能をもつCD133+とsphere形成能を持たないCD133-を各々浮遊培養後、細胞をヌードマウス背部皮下に移植すると、CD133+を含むsphereは、腫瘍形成を認めたが、CD133-のみでは腫瘍は形成できなかった。 EGFやSHHは,親細胞株のsphere形成能を促進した。抗EGFR抗体やSHH経路阻害剤は,親細胞株のsphere形成能を阻害した。抗癌剤DXRは,主にCD133-に作用し,sphere形成細胞におけるCD133+の比率を増加した。低酸素状態では,sphere形成細胞におけるCD133+の比率は増加した。CD133+口腔扁平上皮癌細胞の機能維持には,EGFおよびSHH経路が重要な働きをしていると考えられ,EGFやSHH経路を標的とした分子標的治療と抗癌剤の有用性が強く示唆された。
|