研究課題/領域番号 |
15K11254
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
青田 桂子 徳島大学, 大学病院, 助教 (70437391)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / ケモカイン / IP-10 |
研究実績の概要 |
シェーグレン症候群 (以下 SS) は、外分泌腺を標的とする自己免疫疾患である。発症機序は未だ不明な点が多く、このため根本的治療法は確立されていない。我々は、SS 患者の唾液中に存在する蛋白質を網羅的に解析した結果、ケモカインである interferon inducible protein 10 (以下 IP-10, 別名 CXCL10) が過剰に存在することを見出した。また、SS 患者口唇腺の DNA マイクロアレイ解析の結果、正常口唇腺と比較し IP-10 は 6.6 倍の発現上昇を認めることを明らかにした。以上の結果から IP-10 が SS の病態形成に重要な分子であると考えられた。 IP-10 の口唇腺での局在を調べるため免疫組織化学染色法を行ったところ、IP-10 は導管上皮に強く発現していた。IP-10 のレセプターである CXCR3 の局在を免疫蛍光抗体法で調べたところ、マクロファージに発現を認めた。一方、浸潤 T リンパ球の大部分には CXCR3 の発現を認めなかった。 次に、SS 口唇腺における IP-10 の過剰発現の誘因を解析するために、当教室で樹立した不死化正常ヒト唾液腺腺房細胞株 (NS-SC-AC) および導管細胞株 (NS-SV-DC) を用いて in vitro での解析を行った。IFN-γ、TNF-α、IL-1β、LPS を添加し IP-10 の mRNA および蛋白質発現を qRT-PCR および ELISA を用いて解析した。その結果、導管細胞では IFN-γ、腺房細胞では TNF-α で IP-10 の発現が誘導され、導管細胞でより強く発現誘導されることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していた SS口唇腺の DNA マイクロアレイ解析を実施した。IP-10 に関連する遺伝子として、CXCL9、CXCL11 などが同定された。このため、ヒト唾液腺における IP-10、CXCR3 の発現解析の際に CXCL9、CXCL11 もあわせて解析を行った。本年度はほぼ予定通りの研究が遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、IP-10 は SS の治療標的となる可能性が示唆されたので、今後は SS 疾患モデルマウスを用いた研究を行う。胸腺摘出 NFS/sld マウスの腹腔内に生後 3 週後 (n=10)、4 週後 (n=10)、8 週後 (n=10) から週 1 回、マウス抗 IP-10 抗体および抗 CXCR3 抗体の投与を開始する。なお、コントロールとして生食投与群 (n=5) をおく。そして 10 週齢、30 週齢まで投与を行い、この間 1 週間毎に唾液分泌量と体重の測定を行う。そして 10 週および 30 週齢の時点ですべてのマウスを屠殺し、唾液腺を摘出し、1/3 を病理組織検査、1/3 を蛋白質抽出、そして残り 1/3 を RNA 抽出に用いる。病理組織学的検索では、まず H&E 染色にてリンパ球浸潤および腺房構造の破壊の程度を確認する。次に免疫組織化学染色にて IP-10 および CXCR3 の発現および局在を確認する。さらに、IP-10 および CXCR3 mRNA 発現を qRT-PCR 法で、蛋白質発現を Western blot 法で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で実施予定の研究が完了し、平成28年度実施予定の研究のための抗体を購入したかったが金額が不足していたため、翌年に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
IP-10 抗体の購入にあてる。
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