シェーグレン症候群(SS) は、外分泌腺を標的とする自己免疫疾患であるが、発症機序は未だ不明な点が多く、このため根本的治療法は確立されていない。われわれは、SS 患者の唾液中に存在する蛋白質を網羅的に解析した結果、ケモカインである IP-10(別名 CXCL10) が過剰に存在することを見出した。本研究では、SS の唾液腺破壊の原因分子として IP-10 に着目し、その機能解析を行い、新規の診断、治療法を確立することを目指す。 SS 口唇腺の DNA マイクロアレイ解析を行った結果、IP-10 はコントロール群と比較し SS 群で6.6倍の過剰発現を認めた。免疫組織化学染色にて局在を調べたところ IP-10 は唾液腺導管細胞に強発現していることが明らかになった。 次に、IP-10 のレセプターである CXCR3 の発現解析を行った。SS 口唇腺を用いた二重蛍光免疫染色では、CXCR3 は浸潤Tリンパ球にはほとんど発現がなく、CXCR3+CD163+M2 マクロファージに90%以上発現していることが明らかになった。また、SS 口唇腺をリンパ球浸潤の程度により Grade 1~4に分類し、相関関係を検索したところ、CXCR3+CD163+M2 マクロファージが減少するほど浸潤リンパ球数は増加するという負の相関関係を認めた。 続いて、導管細胞の IP-10 過剰発現をもたらす分子を検索した。正常唾液腺導管細胞株を用いて、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、LPS を添加したところ、IFN-γ刺激にて著明に IP-10 mRNA および蛋白質発現が上昇した。 以上の結果より、SS の発症には IFN-γが深く関与し、IFN-γにより唾液腺導管細胞から分泌された IP-10 は CXCR3+CD163+M2 マクロファージを集簇させ、抗炎症的に作用している可能性が示唆された。
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