研究課題
今回の研究テーマであるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、ホウ素製剤(BPA)をがん細胞に選択的に取り込ませた後に中性子の照射を行うことにより、がん細胞を選択的に破壊する治療法である。この治療を行う際には、BPA投与後の腫瘍中のホウ素濃度と血中や周囲正常組織中のホウ素濃度を予測して線量計算を行い治療計画を立てる必要がある。そこで、BPAを放射性核種18Fで標識したF-BPA製剤を投与してPETで画像化を行い、体内でのホウ素の分布を予測している。そこで、今回はBPA製剤とF-BPA製剤の投与後の各組織におけるホウ素濃度の経時的変化が、同様か否かを調べる研究を行った。がん細胞株を移植したC3Hマウスおよびヌードマウスを用いて、BPA投与群とF-BPA投与群に分けて、投与後30分、1時間、2時間、3時間、4時間に、腫瘍組織、血液、舌、脳、肺、小腸、肝臓、腎臓、皮膚、筋肉を取り出して、灰化処理後にICPを用いてそれぞれのホウ素濃度の測定を行った。尚、BPAおよびF-BPAの投与は実際の臨床を意識して500㎎/Kgで投与を行っている。結果は、すべての組織においてBPAおよびF-BPA投与後1時間目が最もホウ素濃度が高くなっていた。また、ホウ素濃度の高い組織としては、腎臓、舌、小腸、皮膚の順番であった。BPA投与後もF-BPA投与後も各組織におけるホウ素濃度の経時的変化は非常に近似しており、両群におけるホウ素濃度の値も有意差を認めないものがほとんどであった。以上より、現在治療計画を立てる際に行っているF-BPA製剤を投与してPETで画像化を行いホウ素の組織分布を予測することは、今回の研究から妥当であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
京都大学の研究用原子炉の運転が中止されており、当初予定していた通りの実験を行うことは不可能であったが、腫瘍を移植した動物を用いてBPAおよびF-BPA投与後のホウ素の経時的な組織分布の変化を比較することで、臨床に役立つと考えられる結果を得ることが出来た。
昨年度までの段階で5-FU先行投与による腫瘍組織におけるホウ素製剤の集積への影響を検討し、今回はBPAおよびF-BPA製剤の組織分布の比較を行った。今後、京都大学原子炉実験所の研究炉の運転が再開されれば、実際に中性子を照射することにより、これまでの実験で得られた結果がどれだけ腫瘍の大きさの変化に反映されるか否かを検討していきたいと考える。
京都大学原子炉実験所との共同研究を行う予定であったが、研究炉の運転再開が延期されているため中性子照射実験などを行うことが出来ず次年度使用額が生じた。
京都大学原子炉実験所の研究炉の運転再開が予定されており、中性子照射の共同研究に関しても計画を進めている。細胞培養に必要な物品や実験動物の購入に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 6件) 備考 (1件)
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