ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、がん細胞に選択的に取り込まれるホウ素製剤(ボロノフェニルアラニン:BPA)を投与後に中性子を照射することに、ホウ素の核反応を利用しよりがん細胞を特異的に破壊する治療である。がん細胞にいかに多くのBPAを取り込ませることが出来るかがこの治療における重要なポイントである。 がん細胞を移植したマウス動物実験により、抗がん剤の5-FU先行投与によりがん細胞のBPA取り込みに影響を及ぼすか否かの研究を行った。5-FU先行投与により、正常組織でのBPA集積には影響を与えないが、腫瘍組織におけるBPA集積の低下をもたらすことが示唆された。 また、BNCTを行う際にBPAを放射性核種18Fで標識したF-BPAを投与しPET検査を行い治療計画を行うが、BPAとF-BPAの投与後の各組織におけるホウ素濃度の経時的変化が同様か否かの実験を行った。がん細胞を移植したマウス動物実験により、経時的にBPA投与群とF-BPA投与群の腫瘍および正常組織を取り出し灰化処理後にICPを用いてホウ素濃度の測定を行った。その結果、各組織の経時的変化はBPA投与群もF-BPA投与群も近似しており、F-BPAを用いたPET検査でBPAのホウ素集積を予想しBNCTの治療計画を立てることは妥当であると考えられた。 最終年度は主に抗がん剤5-FUの先行投与によりBPAの取り込み低下が起こるメカニズムの検討を、がん細胞を用いて検討を行った。5-FUにより、G2/M期で細胞周期が停止すること、細胞増殖に関与するタンパク発現の低下を認めることが、アミノ酸代謝に影響を与えBPA取り込みの低下につながっていると考えられた。
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