研究実績の概要 |
ヒト舌原発巣から樹立した扁平上皮癌細胞SAS-H1をin vitro クロー ニング法を用いて、ラット肺血管内皮細胞RLEへの癌細胞の潜り込みを指標とした浸潤アッセイ で、高浸潤性癌細胞SAS-H1と低浸潤性癌細胞SAS-L1を得た。そこで、この細胞遊走能や浸潤能が異なる2つの癌細胞を用いて、ADARファミリーの発現をmRNAと蛋白質レベルで検討した。 その結果、高浸潤性癌細胞SAS-H1では、低浸潤性癌細胞SAS-L1と比較して、ADAR1とADAR2の発現量が増強していることが示された。ADARの発現量の変化は、口腔扁平上皮癌細胞に普遍的に共通する現象であるかを、保有する口腔扁平上皮癌細胞7株(HSC2, HSC3, HSC4, IT-GA, IS-FOM, OSC19, OSC20)で、 ADAR1, ADAR2, ADAR3のmRNAと蛋白質の発現レベルを検討した。その結果、共通してADAR1発現が優位であったが、個々の細胞株で様々な発現強度がみられた。このことから、SAS-H1 細胞と SAS-L1 細胞に対して、レンチウイルス・ベクターを用いて ADAR1(p110 アイソフォーム)遺伝子を導入し、ADAR1 高発現癌細胞を作製することとした。その結果、ADAR1遺伝子発現細胞は、SAS-H1細胞で5つ、SAS-L1細胞では、2つ得られたが、SAS-L1細胞で得られたADAR1遺伝子発現細胞では発現効率が低く、悪性化進展機構を解明する際の比較対照実験に困難をきたしている。
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